そして夜になった。

夕食も外で一緒に食べようという約束だったけれど、蔵馬さんは幽助くんに呼ばれて行ってしまった。
どうやら大切な用事があるらしい。

というわけで食事は蔵馬さんが帰ってくるまでお預け。
一度家に帰ってきた暇な私はどうしようかずっと悩んでいる。

「…どうしよう」

荷物の整理も終わったし、お風呂などの準備も終わった。
ベッドに座ってぼんやりとテレビを見ながらひたすら考える。

その時、ケータイのメール着信音が鳴った。
蔵馬さんかと思いケータイを開き、メールを見ると

「あ…」

明日の夜に会う約束をしている男性からだった。

『明日の夜で大丈夫?』という確認メール。

「んー…」

正直、蔵馬さんがいつまでいるのか分からないけど…夕方には帰るよね。
そう思って私は返信する。

返信が終わると私はしばらくぼんやりし、またテレビを見始めたのだった。

















「そうですか…ついに妖怪達が騒ぎ始めてるんですね」

「ああ。コエンマと飛影からの情報だ。間違いないだろうぜ」

幽助はそう言いながらタバコに火をつける。

屋台に座って話を聞いていたのは蔵馬と桑原だった。

「魔界のトップが変わってから妖怪達の落ち着きの無さは目にあまりますからね。いずれはこうなる予感はしていたよ。
今のトップは実力はあるが統率力が無さすぎる」

「だろ?俺も薄々感じてたんだよ」

「おいおい…じゃあまさか人間界にいる妖怪達まで騒ぎだすってんじゃないだろうな」

「一部では騒ぎだしてるのかもしれないね」

「勘弁してくれよ…」

蔵馬の言葉にうんざりとうなだれる桑原。
しかし言った当の本人の表情はなんとも涼やかだった。

「一度魔界に行って黄泉と話すしかないな…」

「悪ぃな蔵馬。せっかく希紗と二人きりだったのによ」

「気にしないで下さい。
それに、彼女は利口な女性ですからなんとなく事情を掴んでるかもしれませんし」

「あー…確かに目ざとい所はあるな、あいつ」

身に覚えがあるのか幽助は苦い顔をしてタバコの煙を吐き出した。

そんな友人の表情に蔵馬は可笑しそうに笑い、そしてフト疑問に思う。

「そういえば幽助…ずいぶん希紗について詳しいですが、いつ知り合ったんですか?」

「ん?あー…3、4年の付き合いになるかなぁ…
希紗がまだ大学行ってた頃からの付き合いだよ。あいつ大学生の時代から一人暮らししてたからよ。
桑原も同じぐらいだよな?」

「もうそんなに経つっけなぁ」

「どこで知り合ったんですか?」

「俺の屋台。そん時は客も希紗だけだったし、ずいぶん落ち込んでたから俺から声をかけたんだ」

「…落ち込んでた?」

「一人暮らしを始めたばかりだから不安ってのもあるけど、何よりも母親が心配だっつってたな。
希紗の母親、半身不随の障害持ってんだよ。ずっと車椅子生活だってよ」

「え…」


新たな素顔
知らなかった。
彼女の母親が、そんな事情を持ってるだなんて…




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