「(あ、そういえば…)」

色がきれてる絵の具が数個あったよね。ペン入れの際に使うインクもそろそろなくなりそうだ。
インクといえばあのメーカーのカラーインク試してみたいんだよなぁ
ソフトパステルも数本買っておきたいし、マーカーと水彩色鉛筆のストックもちょっと欲しいかも。
そういやA4のボードがなくなってたっけ?
買っとかないと必要な時になって無いなんて事態になったら面倒だもんね。

南野さんと手を繋いだまま歩いていると、次々と頭の中に今ほしい物が出てきた。

でも買う為には画材店をちょっと見て回らないとな…
お店によって置いてある品物って違うんだよね。

チラリと一瞬だけ南野さんを見た。

…やっぱり南野さん連れまわすの悪いなぁ。つまんないだろうし。
今すぐ欲しいけど急ぎでもないから、今度1人で来た時に買おうかな。

そう思って諦めようとした時、いきなり前を歩いていた南野さんが立ち止まる。
考えて事をしていた私はそれに気付けなくて、彼の背中に顔をぶつけた。
鼻が引っ込んだらどうしてくれる。

「…希紗」

少し怒った顔をして振り向いてきた。

「寄りたい店があるならちゃんと言って下さい。
俺のことは気にしなくて良いから」

「…でも」

仕方ないじゃないかっ気になるもんは気になるもんよ!

言葉を詰まらせ、なかなかハッキリさせない私に南野さんはため息をつく。なんか癪だな。

そして彼はとんでもないことを言ってきた。

「俺が興味あるので、連れて行って下さい」

………………。

いや、嘘だよね?絶対嘘だよね?死んでも嘘だよね!?
南野さん今までそんな素振りまったくなかったし、明らかに私が遠慮しないようにってわざと言ってるよね。

「み、南野さん…そんな無理してまで…」

「こう言わないと希紗は遠慮するばかりでなにも言ってこないでしょう」

「…………」

「希紗と一緒に過ごす為に泊まりにきたのに、このままだと何しに来たんだか…」

「…だけど…」

やっぱり、つまらないと思う。

なるべく二人が楽しめるような…

「案内して下さい。」

「えっ」

問答無用のようだ。

そんな彼に私は内心でため息をつき、仕方なく店へと案内したのだった…



















画材店に着くと南野さんは興味深そうに周りを見回している。

「…面白くないでしょう?」

「そんなことありませんよ。
日頃見慣れない物ばかりですから興味ありますし…
学生時代ではよく見かけた懐かしい物もありますしね」

嘘は言ってないような表情だった。

ちょっとだけでも南野さんが楽しめるのなら良かった…
…て、なに私はさっきから南野さんの心配ばかりしてるんだろう。
やっぱり恥ずかしいからさっさと買い物を済ませて店から出なくては。

そう思って必要な画材をどんどん手に取っていく。

その様子を見ていた南野さんは何故か感心したように

「迷いもなく手慣れてますね」

「…そりゃ…日頃から使ってる物ですから…」

「そういえば、珍しい物見つけたんですよ。
これって何に使うんですか?」

南野さんが手に持って私に見せてきたのもは小さめのペインティングナイフ。
私にとってペインティングナイフは身近な物だから別に珍しくともなんともないけど…

「(南野さんにとっては珍しいんだ…)」

なんだか、新鮮だな。

「ペインティングナイフっていう物です」

「へぇ、これが…名前は聞いたことありますけど…」

「使い方は人によって違いますが…主に油絵です。
私は水彩画で使ったりもしてました。質感を出す為に…」

「水彩も色々あるんですね」

「多分南野さんにとって一番馴染みがあるのは不透明水彩だと思います」

「え、水彩に種類なんてあるんですか?」

「不透明水彩と透明水彩が…
後は似たようなものでアクリルやポスカラ…」

「面白いですね。どう違うんですか?」

「えーっと…確かアクリルとポスカラはー…」


二人だけの時間
気がついたら二時間も店にいた私達。
画材は、何故か南野さんが買ってくれた。
なんか…悪いな。




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