慣れないことはするもんじゃないな。
と、心から私は思った。

気にするなというから、ぎこちないながらもいつも通りでいようとするのだが…
やっぱり隣にいる南野さんが気になって仕方ない。

なんか…言葉が悪いけど、日頃私がなにをしているのかと監視されてる気分だ。
いや南野さんにそんな気はないんだろうけど。

とにかく南野さんが気になって気になって仕方ない。
この際逃げてしまおうか、なんて考えてしまう。

ああああ。誰か都合よく南野さん目当てにたかってくれないかな。
会社の同僚でもいいから、なんなら会社の見知らぬ女性達でも構わない。
すれ違う度南野さん目当てに振り返る町の女性達だって良いんだ。
彼氏持ちだろうが関係ない。南野さん美形説はガチだし私もそれについては納得済みだからっ誰もが振り返るよね?
ほら。勇気を出して!

なんてもはや爆発寸前の頭で色々なことを考えていると、どうやら神様が哀れと思ったのか味方してくれたようだ。

「あれ…南野さんじゃない…?」

いち早くその声を聞き取った私は素早く南野さんから離れて走り出した。

身の潔白の為にも。それが本音だろなんて聞こえない聞こえない。

「あ、希紗…!?」

いきなりのことに驚いた南野さんが慌てて追いかけてくるが

「やっぱり南野さんだっ」

「奇遇ですね南野さーん!」

2人の女性に捕まった。
よしよし。それで良い。

女性2人に囲まれ、少し戸惑いながらも会話に付き合っている。
彼は基本紳士だから狙い通りだ。
電柱の影に隠れてる私はとっても怪しい人だけど気にしない。

「これからどうしようかな…」

さて、暇になった私はどうしよう。

息はつけたけどこのまま南野さんを捨て置くのもなんか悪いし…
いや焚き付けたのは私だけど。

とりあえず電柱に寄り添ってるのは止めとこう。本気で通報されかねない。

そう思って歩きだそうとした時、ガッシリと後ろから手首を掴まれた。
え、ヤな予感。

「俺を捨てていくなんて良い度胸ですね」

やっぱり。

観念して私は振り返る。

「み、南野さん…女性のお二方は?」

「彼女達には悪いですが適当にあしらって来ました。
希紗が逃げようとする姿が見えたので」

「…はぁー…」

肩を落とす私。
ちょっと遅かったか…

「あくまでも逃げようとするなら肩を抱いて歩きますよ」

「いやー!やめて下さい!!」

世の女性達から刺されるっ
まだ死にたくなーい!!

「じゃあ逃げるのはナシですよ」

「分かりましたっ分かりましたから!」

ちょっとしたジョークだったのに!もう!
……半分本気だったけど。

私の手首を掴んでいた南野さんの手が離れ、ホッとするも束の間。
何故か手を握ってきた。

「…………あのぅ?」

これは一体?

「逃亡防止です。
恥ずかしいからといって逃がしませんよ」

「はっ恥ずかしくなんか…!」

「俺だって傷付くんですからね」

「…………」

手を繋いだ状態で、私は南野さんに引かれるように歩きだした。

理由は分からないけど…
なんでか胸がドキドキした。

…これは恐怖なのか?


心なしか胸が熱い
「(悪いことしちゃったかな…)」
「(こう言っておかないと希紗は繰り返すからな)」




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