ちょっと遅めの朝食をとった後、困ってしまう次の質問。

「どこに行きたいですか?」

「…………」

行きたい。行きたい場所…
困った。本気で思いつかない。
普段出掛ける時は1人が多い私。
もちろん友人と出掛ける時もあるが大半は1人で気楽気ままに好きなだけフラフラと色んな店を渡り歩く。
一度そんな私の買い物に付き合った友人が『足が痛い』と音を上げたほど。

歩く距離はそんなに長くはないのだが立ち見や目的地へ行くまでの寄り道が多いせいでかなりの距離を歩いたことになるのだ。
慣れっこの私はなんてことないが、友人は慣れてない上にヒールで歩くもんだから疲労も半端ないだろう。
『買い出しにヒールでくるから…』と呆れながら呟いていたことを思う。

それはさておき、つまりそういうことだから相手も楽しめるような店を知らないのだ。
女の子同士なら服やアクセサリー、小物を見たりして楽しめるけど…
今回の相手は男性。
自分が好きな店を案内しても良いがどれも似たような内容の店だ。
本屋か画材店。その程度。

本屋なら秀才の南野さんのことだから楽しめそうだが…
一日中本屋っていうのもどうなんだ。いや、私は別に構わないんだけど。

「…希紗?」

不思議そうな表情で南野さんが顔を覗き込んできた。

「え、えっと…」

「どうしましたか?」

「あの」

「………」

「わ…笑わないで下さいね」

「?…」

「私、そのぅ…行きたい場所って特になくて…
いつも気ままに、目に入った店に入ったりしてたから…」

「……」

「それも女の子が喜ぶような店だから、男性の南野さんが楽しめるようなお店って分からなくて…」

「………ふっ」

吹き出したと思ったら声を上げて笑いだした南野さん。
ちょっなにこの人。笑わないでって言ったのに関係なく笑いだしたよ。軽く殺意を覚えるんだけど。殴っていいかな。

「わっ笑わないで下さいよ!」

「すみません…っ
あまりにも可愛いことで悩んでるみたいだったので、つい…」

「はい!?」

今なんて言った!?

南野さんはひとしきり笑い終えると未だ肩を震わせながら

「そんなこと気にしなくて良いんですよ。
希紗の行きたい所に付き合います。
俺が行きたいと思った時はちゃんと言いますから…
普段、友人と出掛ける感覚で良いんですよ」

「でも、私が行きたい場所とか…普段行ってる店なんて本屋とか画材店とか…
とても南野さんが楽しめるようなお店じゃないですよ?
きっとつまらないですよ」

「だから、そんなの気にしなくて良いんです」

「だけど…距離はないけど結構歩きまわりますし…」

「これでも鍛えてますし、第一俺は男です。
女性の体力より勝ってると思いますよ?」

「…で、でも…」

いつの間にか俯いてしまっていた私。

そんな私を見て南野さんはクスリと笑って微笑むと

「希紗、もしかして…緊張してる?」

「っ!」

顔が赤くなる様子が自分でも分かった。

やはり南野さんにも分かったのか、彼は笑いながら、少しイヤミっぽく

「へぇ、普段男性との付き合いは良いほうだから、もう慣れっこだと思ってましたよ。
もしかすると男性と一緒に出掛けること自体初めてですか?」

「ちが!そんな…!」

「図星のようですね」

「っ…」

「可愛い一面も、ちゃんとあるじゃないですか」

「ええ!?」


だから慎んで
男性との付き合いは

するなとは言わないから、せめて少しは自重してほしい。
初めて出掛ける相手が俺で良かった。




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