すっかり寝入ってしまっていた私が目覚めたのは、次の日の朝だった。

「なんか贅沢だよね〜朝から温泉なんて〜」

「ほんと、気持ち良かった〜」

気持ち良さげに女性陣がきゃいきゃいとはしゃぎながら湯上がりを堪能している。

「私も気持ち良くなりたいよ」

「希紗二日酔いだっけ?
慣れないことするから」

「焚き付けたのは向こうじゃんか…」

「挑発に乗らない」

「希紗ってほんと子どもっぽい上に男っぽいよね〜」

「確かに。大人っぽさはないね」

「これじゃ南野さん相手しないのも分かるかも」

「相手されなくていーです」

只でさえ日頃からイヤでも相手されてんだ。これ以上相手にされたらたまんないよ。

そんなことを考えながらみんなと歩いていると遊戯室のような場所に来た。
そこには卓球台やダーツなど様々な遊び道具が置いてある。
いくつもある卓球台のひとつを占領していたのは男性陣だった。
遊戯室に現れた私達を見つけると

「卓球しよーぜ!」

「やるやる!」

わらわらとみんなは男性陣の元へ走っていった。

「チーム戦の勝ち抜きな!男子対女子っ」

「ええ〜!?なにそれ!
私達ほとんど卓球やったことないのに不利じゃんっ」

「俺達だって全員未経験者だよ。それに人数は女子の方が多いからハンデにもなるだろ?」

ブチブチ文句を言う私を除いた女性陣。うーん、なんというか…みんな南野さんと一緒のチームになりたいんだろうなぁ

「じゃあ私最後がいい!絶対無理だもん!」

「私も最後がいいっ」

「私も!」

「えー?じゃあ誰が最初なの」

『希紗!』

「ちょっ私かい!」

呆れたように問うと当たり前のように返事が返ってきた。どういうことだ。

「お願い希紗っ」

「私も卓球したことないんだけど……二日酔いだし」

「すぐ負けてもいいから!お願い!」

「…しょうがないなぁ」

手を合わせてくる友人達に私はため息をついてラケットを持った。

「すぐ負けても文句無しだよ?」

『もちろん!』

にこやかに笑って頷く友人達を背に私は一番手の男子と向き合った。

「いくぞー」

男子の気の抜けた声と同時にゲームは始まった。















「希紗すごーい!」

「あっという間に三人抜きしちゃった!」

四人目と対戦中の私の後ろから女性陣達がはしゃぎながら応援する声が上がる。

「ちょっちょっと待て!なんでこんな強いんだよ!?」

焦る対戦相手を気にせず私はスマッシュを叩き込んでゲームセットした。

『すごーい!四人抜き!!』

「希紗強い!卓球したことないんでしょう!?」

「したことないよ?本格的には、ていう意味だけど」

「どういうこと?」

「大学であったスポーツ大会でさ、私素人なのに数合わせで卓球チームの個人戦メンバーになっちゃって…
元卓球部や現役卓球部を押しのけて優勝したことあるの」

『ええー!?すごーい!』

「昔からスポーツ好きだったからさ〜…」

「かっ可愛くねぇ!ずっと黙ってたなんてよ!」

「勝負の世界に可愛さを求めてどうすんの!さぁ次は誰!?」

吠える男性陣に私は勝ち気に笑ってラケットでビシッと指差した。

すると

「俺で最後ですから、俺が出ますよ」

爽やかな笑顔でラケットを持って現れたのは南野さんだった。

「(うわ。やっぱりきた)」

「なんです?そのあからさまに『嫌だコイツ』と言いたげな顔は」

「いえ、気にしないで下さい」

南野さんはにこにこと喰えない笑みで

「俺も卓球未経験者ですから、お手柔らかにお願いしますよ」

ダメだこいつ。なんか裏がある!

「た…タッチ交代!」

「ええ!?」

いきなり私からラケットを手渡され友人は驚いた声を上げた。
それを見て南野さんはまるで挑発するように

「逃げるんですか?」

「やだな。空気読んだだけですよ。
…ほら、私一人楽しんでしまってるから…」

「…なるほど」

なんて言いつつも私にしか分からないようなニヤリとした笑みで言う。

クッ…やっぱり悟られてる!

女性陣全員と対戦してちょっとでも体力が消耗してくれたら私にだって勝ち目はありそうだが…


卓球対決の結末は
「では、いきますよ」
「きゃ!南野さん強いっ」
「(ダメだ。体力消耗所か手加減して楽しんでる)」




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