突然だが、私は今同僚達と温泉旅行に来ている。
大型連休を利用して勝手に同僚達との親睦を深めようと親睦会と称した旅行を前から計画していたのだ。

顔ぶれは女性陣はいつものメンバーに、男性陣はメンバー達が顔見知りになった同僚達。
なのに何故かその中に南野さんがいる。

「んふふふふ。なんで南野さんがいるのかなあ?」

あくまでもにっこりと笑顔を絶やさず私は同僚の女性陣にこっそり問いかける。
女性陣達はキャッキャとはしゃぎながら

『だって南野さんと仲良くなれるチャンスだも〜ん☆』

「勘弁してクダサイ」

プライベートの旅行にまで上司と一緒だなんて悲しすぎる。せめてお休みの時ぐらいゆっくりさせてくれ。

「私ずっと部屋に籠もってる…」

「無理無理。2泊3日なのに」

「そうだったぁ…」

「それに私達が部屋に連れ込むし」

「やめてえぇぇ」

『後は混浴があれば万々歳!』

「いっそ殺してくれ」

そんな涙ぐむ私のことなど気にもかけず、みんなは旅館の中へと入っていったのだった。















旅館に混浴はなかった。女性陣は皆ガッカリしていたが私の中では唯一の救いだった。
さっそく温泉に行こうと誘われ私達は温泉に向かった。男性陣も同じことを考えていたらしく途中まで一緒に行ってやがて分かれた。

「そういえば、希紗の幼なじみはどうしたの?」

温泉につかりながら聞いてきた。

「大型連休は彼女と2人で遊びに行くって前から決めてたみたい」

「いーなぁ彼女の人。希紗の幼なじみってほんっとに優しいもん」

「この間なんか残業してた私にコーヒー淹れてくれて、しかも手伝ってくれたよ?」

『優しいー!!』

「私とあいつは単なる腐れ縁の悪友なんだけどなぁ…
どんだけ猫かぶってんだろ」

「本当は希紗のことが好きだったんじゃないの〜?素直になれなかっただけで」

「ないない。それはない」

「そんなの分からないじゃん」

「ねぇ〜希紗に聞きたいんだけど、今日一緒に旅行に来てる男性陣の中で誰だったら付き合いたい?」

「え〜?」

「例えば!例えばだよっ」

いきなりそんなこと聞かれても困る。
とりあえず私は頭の中で男性メンバーを思い出し

「…っ」

何故か、南野さんを思い浮かべた。

戸惑ったのは一瞬なのに目ざとい彼女達はすぐに気づいたのか興味津々の表情で「だれ?だれ?」と聞いてきた。

「…えっと…付き合いたくない人なら…」

『…はあ?』

「南野さんだけは…ちょっと…」

『ええー!?うそぉ!?』

全員から叫ばれた。

「や、だって…
あの人私のこといじめるし。ほんと、仕事の時怖いんだって」

「信じらんなーい!私達みんな南野さん狙いなのにっ」

「はいはい。好きにしなさい」

「本当に南野さん嫌いなの?」

「いや…別に嫌いじゃないんだけど…
なんていうか……苦手、かも」

「せっかく南野さんの部下っていうおいしいポジションなのに…
希紗ってもったいない」

「変われるなら変わってあげたいよ」

「じゃあ今度私が希紗に知り合い紹介してあげるよ」

「ええ?」

突然の申し出に私は眉を寄せた。

「いいよ。私まだしばらくそういうのしたくないし…」

「別に恋愛しなくても友達になるだけでもいいでしょ?
絶対恋人同士にならなきゃ許さないって言ってるわけじゃないんだし」

「そうだけど…」

「ね?ちょっと会って話してみるだけでいいから」

「……わかった」

これも付き合いだと思い、仕方なく承諾する。
そして小さくため息をついたのだった。


波乱な予感
「(…いやな予感がするな。
…まさか、希紗…?)」
「南野先輩どうしたんすか?」




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