海賊達は間近だった夏島にたどり着いた。
ログが溜まるまでの一週間はこの島で停泊することになる。
見張りとしてゾロが船に残ることになり、他のクルー達はショッピングや食事へ向かうことになった。
「あなたの服もなんとかしなきゃダメね…」
ショッピングへ行く前にナミが少女をジッと見つめながら呟いた。
「なんだかその服ボロボロだし、足だって裸足じゃない」
「…?」
「冬島が近づいたら凍えるほど寒いんだから、その服だけじゃやっていけないわ。
…仕方ないわね。
仲間になったお祝いに私が買ってきてあげるわ!」
「?……?」
なんとか言葉を理解しようとするが、やはり分からないのか困惑している。
「いいのよ気にしなくて。
うちの船長を助けてくれたお礼でもあるんだからっ」
にっこり笑って少女の肩にポンッと手を置く。
言葉は通じないけど、なにかを察したのか少女は
「Thank you」
そう言ってぺこりと頭を下げた。
ナミも、言葉は通じないけどなんとなく理解して再び笑った。
「私は図書館へ行ってくるわ」
「あらロビン、調べ物?」
「ええ。私が持ってた本にその子の服の模様を記したものがなかったの」
「そう…
じゃあ、お願いするわ」
ナミの言葉にロビンは微笑んで船を降りていく。
そしてナミもしばらくして買い物へと町へ繰り出したのだった。
船で船番をしつついつものように鍛錬をするゾロ。
時折彼は、ちらりと少女を監視するような目つきで見ていた。
元々警戒心の強いゾロは少女を心から信用出来なかった。
けれど、船長を助けてくれた。悪い奴ではないはず。
だけど……
そんな風に内心は堂々巡りを繰り返している。
だがそんなことなど露知らず、船から降りたものの近くで一人マイペースな少女はのんびり海と戯れたり、カモメを追いかけたりして遊んでいる。
そんなほのぼのとした雰囲気にゾロは自分の警戒心がバカバカしくなり、休憩がてら昼寝をしようと一人寝付いたのだった。
そして――
次に目が覚めた時、少女は自分の横に体操座りの姿で静かに座っていた。
「うお!?」
ゾロは気配に気づけなかったことと、初めて間近で見る少女に驚いて慌てて身を起こして距離をおいた。
少女はキョトンとしている。
「てっテメ!いつの間に……!?」
その時、ゾロは自分の体に一枚の毛布がかけられているのに気づいた。
「………これ、お前が…?」
「……?」
言葉が通じてないようだ。
不思議そうな表情をしている。
だがゾロは船内に自分と少女しかいない状況で確信していた。
「あ…ありがとな」
「Do you forge every day?」
「は!?」
通じない言葉にゾロは戸惑った。
会話が成立出来る自信がないからだ。
だが少女は返事を期待するようにジッと見ている。
「べっ別に迷惑じゃねぇ」
成立してないかもしれないがとりあえず安心させようと頭にポンと手を置いた。
そしてすぐ手を離し、ぼんやりと空を見上げた。
「……お前、名前は?」
「…?」
「ああ、言葉が通じねぇんだったな」
「……………sedna」
「……あ?」
少女の呟いた単語にゾロは眉を寄せて見る。
少女はゾロを見上げながらもう一度呟いた。
「sedna」
「セドナ?
セドナっつー名前なのか?」
コクリと頷く。
「I am sedna」
苦労して聞きだそうとした数日間はなんだったのか。
あっさりと聞き出せた少女の名前に、ゾロは肩を落とした。
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