目を覚ますと、そこはメリー号の甲板の上だった。

「あれ…?ここ…?」

ナミが頭を抱えながら起き上がった。

どうやら全員しばらく気を失っていたのかぼうっとする頭を無理やり起こし、体も起こして周りを見た。

「メリー号…だよな」

ウソップも頭を抱えながら同じく周りを見る。

周りの海も穏やかで、風も優しく凪いでいる。
あまりにものんびりとした風景に、先ほどまでの戦闘と出来事がまるで夢のようだ。

「そうだ!セドナ!」

チョッパーがハッと思い出して、セドナを抱いているであろうルフィのもとへと走る。

「ルフィっすぐにセドナの手術を……!?」

甲板に座り込み、俯いているルフィ。

その腕の中には
いたはずのセドナがいなくなっていた。

チョッパーはその事態の理解が出来なかった。

「な…なぁルフィ、セドナは…?」

「………」

何も答えない。

セドナという存在が夢だったかのように、キレイにその存在が消えている。

だが、ルフィの服や腕に付着している血は、確かにセドナのものだった。

ルフィは呆然とその付着している血を見つめている。

少女の姿が消えたことに気付いたのはチョッパーだけでなかった。
様子の異変に気付いたサンジが振り返り、セドナがいないことに気付いたのだ。

「おいルフィ!セドナちゃんはどうした!?」

「………」

「うそ…セドナは!?
ルフィ、セドナはどうしたのよ!」

「なんでいねぇんだよ!?」

仲間から次々問われるも答える様子がない。

痺れをきらしたサンジがルフィの胸ぐらを掴んで無理やり立たせると

「おいこらクソゴム!なんとか言いやがれ!!」

そう言ってガクガクと体を揺らした。

「…離せよ」

低い声でルフィは言うが、依然として表情は見えない。

サンジは臆することなく

「だったら言え!セドナちゃんはどうした!!」

それを聞くとルフィは自力で、無理やりサンジの腕を剥ぎ取った。

そして

「あいつは…来なかった」

「は?」

「抱いていたおれを突き放したんだ。
そしたら、おれやお前達の体が光った。
…目が覚めたらここにいた」

「それって、まさか…」

「手を伸ばしても届かなかったんだ。
あいつを、なんとかして一緒に連れて行こうとしたのに…
あいつに、届かなかった…っ」

表情は帽子が影になっており分からない。
だが、体が小さく震えている。

声が、震えている。

すべての事態を知ったクルー達はただ絶句するのみ。

ナミやチョッパーは、じわじわと涙が溢れ

「そんな…っそんなのって…!」

「セドナが…おれ達を助ける為に…!?」

あの出血で、あの高さから落ち、仮に助かったとしても落ちる先は海。

末路は、誰でも容易に想像できる。

「嘘よ!そんなの嘘!!
セドナっなんでそんなこと…!
セドナ、セドナ…!!」

ナミが顔を両手で覆って座り込む。

チョッパーも止まらない涙をひたすら流し続け、ウソップは力なくその場にへたり込んだ。

ロビンとゾロは無言のまま俯き、サンジは呆然としたまま動かない。

ルフィも、動けないでいる。

しかし帽子の影に隠れた顔からは幾つもの涙が流れ、甲板へと落ちている。

拳にしていた手を、グッと更に握って力を入れる。

「ちきしょぉぉおおおお!!!」

ルフィの叫び声は
静かで穏やかな海に響き渡る。

「おれは認めねぇ!!こんなのぜってぇ認めねぇからなセドナ!!!
死んでなんかいねぇ!必ず捜して、また一緒に冒険するんだ!!」

ダンッ!と手すりを強く殴るルフィ。

「仲間は死なせねぇ!!
セドナっ…セドナ!
お前をぜってぇ死なせねぇ!
死ぬなんておれは認めねぇからなッ!!!!」

和やかな海とは裏腹に、ゴーイングメリー号は深い悲しみに包まれる。

そんなクルー達に構うことなく、風と波は、次の秋島へと船を誘うのだった。






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