ドサリと倒れるセドナの体。
受け止めてあげたくても、動けない体にルフィは悔しげに歯を食いしばり

「セドナー!!!」

「いやあああ!!」

ナミが悲鳴を上げた。

「セドナ!しっかりしろ!」

「なんて無茶を…!セドナちゃん!!」

今すぐにでも駆けつけたいチョッパーと焦るサンジ。

「嘘だろっセドナ!」

ウソップも冷や汗を流して叫ぶ中、ゾロとロビンも無言ながらも動揺していた。

しかし、動揺していたのはルフィ達だけではない。

倒れたセドナを見ながら男は一歩後ずさり

「馬鹿な…神が人間の為にそこまでするなど…」

信じられない様子でセドナを見下ろしていた男に、突然異変が起きた。

「う!?」

頭を抱え、いきなり身を捩る。

「ぐあ、あぁぁああああ!!!」

『!?』

苦悶の悲鳴を上げ、男はひたすら苦しげに身を捩る。

「何故だ…セドナ…!
お前が死ねば、私も…死ぬ…!!
セドナ…っ女神よ!何故だ!!
何故神々は私を神にしてくれないっ
主神の息子として生まれた私が、何故堕落した世界の番人でしかないのだ!!!
女神よ…!堕落した世界から助けてくれたのはお前だ!それは戯れだったのか!?
うああぁぁああああ!!!」

豹変した男の様子に、ルフィ達は言葉もなく眺める。
その時、なんとなく腕を動かしたロビンが気付いた。

「普通に動けるわ」

「えっ」

「ほんとだ、動けるぞっ」

ルフィ達は動けることを確認すると一目散にセドナへと走った。

一番近くにいたルフィが倒れているセドナを抱き上げる。

「セドナっセドナ!
苦しいか!?いてぇか!?
今抜いてやるからな!」

まだ息はある。
固く目は閉ざされ、体は異常なほど冷たいが、それでもまだ息はあった。

ルフィがセドナの腹に突き立った剣を引き抜こうと柄に手をかけるが

「ダメだルフィ!今抜いたら出血が酷くなって死んでしまうっ」

医師であるチョッパーに止められ、ルフィは慌てて手を引っ込めた。

チョッパーはセドナの体をジッと見つめると

「貫通してる…早く手術しないと手遅れになる…!
早くここから逃げて手当てしないと!」

「でもっどうやって!?
ここはあの男がつくった幻影の船っ出入り口なんか見当たらないわ!」

ナミが叫ぶ通り、今いる部屋はどこを見渡しても出入り口は存在しない。

「どっかにないのかよ!」

ウソップが手当たり次第に壁を叩き、火炎玉で爆破させる。

「幻影でつくられたものは、その術士が解いたり、もしくは死ななければ解けないのがセオリーよ。
最悪、死んでも解けない場合もあるわ」

「そんな…!」

淡々と説明するロビンに、事態に絶望するナミ。

「くそっのんびりしてる暇はねぇのによ!
おいマリモ!てめぇの剣で斬れねぇのか!?」

「今やってる!黙ってろ!!」

剣を構え、壁に向かって技を放つが斬れる様子はまるでない。

「っダメか…!」

「おのれ…!」

男の声にハッとしてルフィ達は男を見る。

「せめて…お…お前達…だけ、でも……!!
ッああああああ!!!」

弾けるように、男の体と男の剣は消えた。

その途端、幻影の部屋がまるで土塊のようにボロボロと崩れていく。

真下に見えたのは、海。
しかし、高さがあまりにも高すぎる。

「メリー号の上じゃないわ!海よ!!
この高さで水面に叩きつけられたら…!」

「どどどっどーすんだよ!!」

ウソップは喚きながら走りまわる。

だがどうすることも出来ないルフィ達はただ部屋が壊れていくのを眺め

「きゃあああ!」

「うわああああ!」

瓦礫と一緒に海へ落ちていくだけ。

ルフィと抱かれたセドナも例外でなく海へと落ちていく。

「くそ!」

仲間を助けられないことにルフィは強くセドナを抱く。

その時だった。

「…ルフィ…」

「…え…」

小さな、か細く名前を呼んだのはセドナだった。

呆然とセドナを見るルフィに、セドナはにっこりと酷く優しい笑みを浮かべて

「Aranuoyas…」

通じない言葉を
まるで囁くように言うと、トンッとルフィの胸を押した。

決して強い力ではなかった。

けれど、何故かルフィの手はセドナの体から離れた。

「な…!」

慌ててセドナに手を伸ばす。

届かない。

「セドナ!!」

ルフィだけでなく、クルー達の体が白く光る。

嫌な予感がしたルフィは必死に、強く叫んだ。

「セドナっやめろ!」

視界が白に包まれる。

「嫌だあぁぁああああ!!!」

視界は完全に白に包まれた。

それからどうなったかは、ルフィ達にも分からなかった…






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