跳んできて、振り上げた拳は男に直撃した。

だが、直撃はしたもののやはり効果はない。
気体のような体に打撃は無意味なのだ。

男は攻撃と攻撃の間で僅かに出る隙をついてルフィに手を向け

バシィ!!

「くっ!」

黒い電撃がルフィへと向かうが白く淡い壁が防御する。

「これでお前を守ってくれるものはなくなった」

「うるせぇ!そんなのいらねぇ!!」

「レディを泣かせやがって…!
そんな行儀の悪いクソ野郎にはおれが直々にテーブルマナーを叩き込んでやるぜ!!」

「!」

男の後ろで跳び上がったのはサンジだった。
動きの鈍い体を無理やり動かし、片足を勢いよく振り上げると

「バース・コート(肩ロース)!!」

やはり足は虚しく男の体をすり抜ける!

「チッ…!」

「どけ!」

次にやってきたのはゾロ。
ゾロは二本の刀を交差させるように構え

「鬼…斬り!!」

凄まじい太刀筋で男の体を斬りつける。
…やはり効果はない。

「必殺!火炎星!!」

パチンコを構えて火薬玉を男の顔面に撃つウソップ。
だが直撃する以前に火薬玉は体をすり抜け、壁に当たって爆発した。

「畜生!やっぱりダメか!」

「ランブル!!」

ウソップの横でチョッパーがランブルボールを噛み砕く。

「ブレーンポイント(頭脳強化)」

両手を目の前にかざし、男を見る。

「スコープ(診断)!」

チョッパーは隅々まで男を探る。

しばらくしてチョッパーは構えを解くと

「ダメだっ弱点が見当たらない!」

「マジかよ!?」

ウソップが嘆く。

「言ったはずだ。何度も言わせるな」

男が手を天井に向ける。

「人間は、神に触れられない」

バシッバシィイイ!!

『うわああああ!!!』

黒い電撃が部屋中に素早く駆け巡る!

避けようとはするが体が上手く動かず、その上素早い動きの電撃に逃げ切れるはずもなく、ルフィ達は全員直撃した!

「ぐはっ!」

「がは!!」

宙に浮いたままだったルフィとゾロ、そしてサンジが床に叩きつけられる。

身動きが、とれない。

「くそ…っせっかくセドナちゃんが助けてくれたのによ…!」

「なるほどな…
枯れかけの力でも、一人に絞れば完全に動けるように出来たはずなのに
わざわざ中途半端な回復でも全員を助けた理由はそういうことか」

男はそう言いながら床に降り立ち、未だ小さな嗚咽を漏らしながら泣き続けるセドナを見た。

「セドナはお前達のチームワークを信じているということだ」

『…!?』

「連携での戦いがお前達の強さだと知って、わざわざ全員を助けたのだ。
たとえ中途半端な回復だとしてもな」

「セドナが…」

ルフィが呆然と呟く。

「お前達全員を信じている証拠だ」

男は身動き出来ず倒れているルフィ達や、立ったままのナミ達に背を向け、床に落ちていた剣を拾い上げる。

「哀れな人間達よ。
死に逝く前に私が女神の代弁をしてやろう。
それで少しでも安らかな眠りにつくと良い」

剣を持ち、男は歩きだす。

「女神はお前達全員を信じ、愛している」

『……』

「女神はお前達全員に安らぎを感じている」

『……』

「女神はお前達全員に言葉が伝わらないことを悔やんでいる。
人間だった頃から今まで、心許せる者がいない女神にとって、お前達全員は初めての大切な存在だった」

男は、倒れているルフィの前でピタリと足を止める。

「モンキー・D・ルフィ。
お前には微かな愛情を抱いている」

「…!」

「女神と人間、そしてすべてを断ち切るのにお前の死は必須だ」

「…っくそ!動けっこの!」

ルフィはなんとか体を動かそうともがく。

男は静かに剣の切っ先をルフィの真上で振り上げた。

「安らかに眠れ。永遠に」

「ルフィ!やめて!!」

「ルフィ!」

『ルフィ!!』

ナミとウソップが叫び、そして全員が声を上げる。

男は振り上げた剣を振り下ろした。

「…ッ!!」

覚悟を決めてルフィが固く目を閉じる!

ドス!

刃が肉を貫く音がした。

「……?」

しかし、ルフィの体に痛みはない。

そっと目を開け、その光景に驚愕した。

「っ…お前…!!」

白い服から滲む鮮血。
薄い桃色の唇から、赤の血が一筋流れる。

ルフィを庇うように
両手を広げて男の前に立ちふさがり、細い腹に剣を受け入れたのは、セドナだった。

ルフィだけでなく、クルー全員、そして男までもが声もなく驚愕する。

腹を刺されたセドナは、服に血を滲ませながらその場に力なく倒れてしまった…






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