ルフィと男の攻防はまだまだ続く。

だが攻撃がまったくきかないことにルフィはひたすら考えながら避けるしか出来ず、反面、男は疲れ知らずの体の為戦いはほぼ一方的だった。

「ゴムゴムの…!」

空中で両足を揃え、男目掛けてつま先を立てて突き刺すように技を放つ!

「槍ィ!!!」

しかし、やはり男の体には無意味のようだ。
なんの感触もなく貫通する。

「くそ!やっぱダメか!」

「無駄なことを」

男がルフィ目掛けて剣の切っ先を鋭く投げる。

それを見たルフィは慌てて避けようと石柱を見つけて手を伸ばそうとするが

「うっ!?」

思ったよりも投げられたスピードが速かったのか、ルフィの赤い服の後ろ襟首に刺さり、そして壁に突き刺さって、まるで襟首を摘まれぶら下がった子猫のような姿になった。

「こんにゃろっ外れろ!」

大急ぎで剣を引き抜こうと手を伸ばす。
しかし剣は深く突き刺さっており簡単には抜けない。

男は空中で浮いたままルフィへ手を向けると黒い電撃を放つ!

「うわ!!」

バシィ!!

思わず両手を前にかざして顔を下に向けるが、セドナの力がルフィを庇うように白く淡い半球の壁となって電撃から守った。

だが男の狙いはセドナの力を発動させることだったらしい。

「あと一回」

そう言ってもう一度ルフィへ手を向ける。

それを見てルフィは力ずくでなんとか剣を引き抜き

「っのやろ!」

叫んで下に落ちながら剣を力いっぱい男へと投げた。
だがやはり貫通するだけで効果はない。

ルフィは後ろの壁を強く蹴って直接殴り込もうと拳に力を込めるが

「ルフィ!待って!!」

ナミの声にルフィは壁を蹴ろうとしていた足を寸どめる。

ナミは男を睨みつけた表情でクリマ・タクト(天候棒)を持っていた。

「そっちが雷ならこっちも雷よ!」

男の真上には、いつの間にか雲が出来上がっていた。

まだ完全に動けない体を無理やり動かし、ナミはサンダーボール(電気泡)を投げ入れた!

雲はとたんに積乱雲となり

「サンダーボルト=テンポ!!!」

バシィーン!!バリバリバリッッ!!!!

100万ボルトの雷が男を直撃した!

「これでどう!?」

「ナミさんっ素敵だー!」

勝ち気に笑って男を見上げるナミの後ろでサンジが目をハートにして叫ぶ。

しかしそんなナミの表情は一瞬にして凍りついた。

男は何の問題もなさそうに、傷も汚れもひとつもなく空中に浮かんでいたからだ。

「効いてない…!?」

「セイスフルール(六輪咲き)」

横でロビンが構え、男の体から六本の手が生える。

「クラッチ!」

いつもなら敵に大打撃を与える技。

しかし、手はすり抜けるだけで男に効いた様子はまるでない。

「ダメね。すり抜けるわ」

ロビンは言いながら構えを解いた。

男は空中からナミ達を見ると

「何故動ける」

そして視線はナミ達から人型のチョッパーに支えられている、苦しげに息をする色白のセドナへと変わる。

「余計なことを」

セドナに手を向けるとチョッパーに抱えられていた細くたおやかな体が宙に浮かんだ。

「ちょっと!なにすんの!」

「セドナ!」

焦ったようにナミとチョッパーが叫ぶ。

「大人しくしていろ」

男の手が勢いよく横に振られた。
セドナの体はまるでその手の動きに従うように勢いよく横に動き、そのままセドナの体は壁へと向かう!

「セドナ!!」

ナミが叫ぶ。
サンジとゾロが慌てて走るが体が完全に動けてない為いつもより足が遅い。

セドナの体が壁に近づく。

間に合わない!

「ゴムゴムの…風船!!」

間一髪間に合ったのはルフィだった。

ルフィは大きく息を吸い込み、体を膨らませると勢いよく突っ込んできたセドナの体をキャッチした。
ゴムの反動で飛んで行きそうになった所を手を伸ばして捕まえ、空気を抜いた元の姿で抱き留め、そして壁に叩きつけられた。

壁が壊れるほどの威力だったがゴムの為ダメージはない。

ルフィは腕の中のセドナを見ると気を失っているだけで傷などはない。
とりあえずホッと息をついた。

「てめえ!クソ野郎!
戦えねぇセドナちゃんになんてことしやがる!!」

「余計なことをするからだ」

気を失っていたセドナは割とすぐ目を覚ました。

「大丈夫か?」

「…」

聞いてくるルフィにはなにも答えず、顔色が冴えない真っ白な顔を上に上げ、青色の瞳に男を映す。

「Awian ieknak awarerak…」

分からない言葉で男に言うセドナ。

「Et isagonim arakad…」

男はしばらく黙る。
だがすぐに強い口調で

「No」

「……」

「Akonuri ettomo oturijut arasami.」

「…Iageno…」

「聞き分けのない娘になったものだ。
…すべて貴様等と関わったばかりに」

男は初めて、ルフィ達に憎悪のこもった視線を向けた。

「痛い目をあわせるだけだったが…
どうやら完璧に繋がりを絶たなければならないようだな」

男はもう一度セドナを見ると

「Usorok awarerak.」

「…!」

セドナの目が大きく見開かれる。

「Iageno'etemay!!!」

セドナが、泣いた。

『…!?』

初めて見たセドナの表情に、ルフィ達は言葉もなく驚く。

「泣いた…」

「セドナが…」

呆然と呟くサンジとナミ。

ルフィはセドナの涙を見た途端、怒りが湧き上がった。

「てめぇ…セドナになんて言いやがった」

「お前達を殺すと言った」

その言葉に、ルフィは強く男を睨みつけ

「やってみろぉおおお!!!」

叫び、ルフィは男へと向かって床を蹴り、宙を跳んだ!






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