振り上げられた剣を見てルフィは慌てて上に跳んで逃げた。

「あっぶね!」

しかし安心するのも束の間、男はその後を追うようにフワリと飛んだ。

「!?」

息つく暇もなく迫ってくる男にルフィは驚愕し、油断しまくっていた腕を無理やり動かして、近くの石柱へと伸ばす。
腕をぐるぐるに巻き付けるとゴムの習性で体は石柱へと引き寄せられ、振り下ろされた剣から逃げることに成功した。

「ふーっ危ねぇ危ねぇ」

石柱にへばりつき、ホッと息をつくルフィ。

その時

「無駄なことを」

男がルフィへ手を向けると黒い電撃が迸る!

「ゲッ!?」

完全に油断していたルフィはその黒い電撃に直撃してしまった!

「ルフィ!」

戦いを見守っていたクルー達。
思わずナミが直撃し、石柱が壊れて煙が立ち込める場所を見ながら叫んだ。
他のクルーも冷や汗を流して見つめる。

やがて煙が晴れると、そこには壊れた石柱と傷ひとつなくへばりついているルフィがいた。

傷どころか汚れてすらない姿にクルー達は静かに驚く。
それは当人も同じだったらしく、呆然とした顔になっていた。

「ルフィ!大丈夫なの!?」

「…ああ。いま、変な白い壁みたいなのが…」

「へ?」

「ただの人間に力を託すとそうなる」

男は淡々と言った。

「今のお前に私の力は通じない。
セドナが力を託したことにより結界が出来るからな」

「………よく分かんねぇ」

「つまり、セドナちゃんの力がお前を守ってんだよ」

顔を歪める船長にサンジが呆れながら分かりやすいように教えた。

ルフィが『なるほど』と理解した所で男は続ける。

「しかし、所詮は人間。
託された力を使うことなど出来ない。結界として身を守るのみ…
託された力には限度がある。セドナの力が身を守ってくれるのも後二回ほどだろう」

「つまりあと二回しか守れねぇんだな?
よし、じゃあその間にお前をぶっ飛ばす!」

「人間が神に触れられると思うな」

「セドナは触れた!」

「セドナは元々人間だ」

「だいたいな、そんなの関係ねぇんだよ!」

ルフィが石柱に巻き付けていない片方の手を拳にし、力を込めると

「ゴムゴムの…!」

「…!」

男がルフィを見据える。

「ピストル(銃)!!!」

ルフィの拳が一直線に前に浮かんで佇んでいる男を、鋭く『貫通』した!

「…え!?」

目を見張って男を見る。

そう、拳が男を貫通したのだ。
肉体にぶつかる感触などまったくなく、まるで煙に拳を撃ったかのように。

「どうなってんだ…!?」

「言ったはずだ。
人間は神に触れられない」

「まさか…」

始終見ていたナミは呟く。

ルフィもナミと同じことが頭によぎったらしいのか

「お前…!まさかケムリンと同じ悪魔の実を!?」

「神に悪魔の実など必要ない」

「うわ!!」

再び迸った黒い電撃を慌てて避ける。
そして床に着地して男を見上げた。

「くっそー…生まれつきケムリンみたいな体してんのか。
どうすりゃ良いんだ?」

「私を倒したければセドナを殺せ」

「うるせぇ!嫌だ!!」

黒い電撃が迫り、それを避けるルフィ。

そんな中、攻防戦を身動き出来ずに見守っていたナミの手が突然ヒヤリと冷えた。

「え!?」

冷たさに驚いて目だけを動かして見ると、セドナがナミの手を握っている。

「セドナ…?手、異様に冷たくない…?」

「………」

なにも答えずセドナは目を閉じる。

途端にナミの体が淡く光り始めた。

「セドナ…?」

体が、少しずつ動けるようになっていく。
けれどいつも通り動けるほどではない。

まるで氷を溶かしていくように、徐々に徐々に体が動けるようになる。

まだ完全には動けないが、少し歩けるぐらいまでの動きがとれるようになった所で、セドナの手が離れた。

ナミはなんとなく周りを見てみるとサンジとゾロ、そしてチョッパーは動けないふりをしながらも目線で『同じ状況だ』と伝えた。

どうやら三人も完全というわけではないが動けるようにはなったらしい。

ナミは心で喜び

「ありがとう、セドナ」

と、小さく言ってセドナの顔を覗き込んだ。

そこでナミは気づいた。
セドナの顔色がいつも以上に白く、苦しげなことに。

「っセドナ…!?」

胸元を抑え、苦しげに体を引きずるようにナミから離れ、次のロビンへと向かう。

「あの子…まさか…っ」

ナミには、嫌な予感しかしなかった。






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