「いてて…」

動ける者がセドナと男しかいない。
そんな絶望感の中、呑気な呻き声が聞こえた。

「ルフィ!?ルフィなの!?」

動けない為確認が出来ないナミ。
しかし声を張り上げて確認する。

「…なに固まってんだ?お前ら」

「分からないのよ!いきなり出てきた黒い電撃に当たったらこうなったの!」

「おれも当たったけど別になんともないぞ?」

「そりゃお前はゴムだから…」

「違うな」

サンジの言葉に静かにルフィを眺めていた男が言った。

「私の電撃は普通のものとは違う。どんなものも突き通し、動きを封じる」

「じゃあなんでおれは動けるんだよ」

男はゆっくりと視線をセドナに向けると

「神の力を託したな…」

「託した?託したってなんだよ。
おれはセドナからなにも貰ってねぇぞ」

「いや…おいルフィ。
おれが前おまえに言ったことがあるだろ。
男部屋にセドナちゃんが入ってきて、触れたらおまえが光ったって」

「ああ、そういやあったな」

「多分それだ」

「へぇ、お前いつの間に」

何故かルフィは感心してセドナを見る。
彼女は変わらず無表情のまま。

「人間に神の力が使えるはずがない」

「神、神、うるせぇ!おれは神をぶっとばしたことあるぞ!!」

「所詮人間のかたり上げだ。悪魔の実などとふざけた能力は一切ない、神のみ持ち得る力。
それは海の神、そして海の王のみ許されたもの」

「海の王はおれだ!おれは海賊王になる男だ!!」

「人間に海を支配することなど出来ない。
波を変え、天候を変え、海すべてを味方にし生き抜く。それが海の王、そして神。
お前にそれは出来ない」

「ああ、確かに。おれ一人じゃなにもできねぇよ。
でもなっおれには、海を乗り越える為、天候と海を読む優秀な航海士がいる!
戦いの勝ち抜く為の強ぇ剣士もいれば狙撃手もいる!傷付いたら万能の医者もいるッ!
腹が減ったら美味い飯を作る一流コックだっているんだ!頭の悪ぃおれには分からない、難しい内容は頼りになる考古学者もいるぞ!!
海すべてを味方にする事は出来ねぇけどよ、おれには乗り越えて生きていける仲間がいるッ!!
だからおれは!仲間を守るんだ!!!」

「……………」

「セドナだって仲間だ!
言葉が通じないとか、海の女神だからとかそんなの関係ねぇッ!!
一緒にいて楽しいならそれで十分だ!!」

ギッと強い目で男を睨む。

「セドナは渡さねぇ…!
お前をぶっとばして、セドナとまた一緒に海に出る!!」

「そうよ!セドナは私達の仲間よ!!」

「セドナちゃんは渡さねぇぞっ変態クソカラス野郎!」

「おれ達はずっとセドナと一緒にいたいんだ!」

ナミ、サンジ、チョッパーとルフィに続くように声を張り上げる。
そんな声を背後にしルフィはまっすぐと王座に立つ男を睨みつけている。

男は騒ぐナミ達と睨んでくるルフィを見ると

「私を倒したければセドナを殺すがいい」

『!?』

「私の力や体はすべて、長年ゆっくりとセドナから奪ってきた力だ。私に苦痛も死もない。
セドナの持つ力というヨリシロとなる力があるから私も生きてられるのだ。
私が力をすべて奪えばセドナがいなくとも生きてられるが、まだ途中ならセドナの力と連動する我が力も命も、ヨリシロなくしては生きられない」

「…なんですって…!?」

ナミが目を見開いたまま驚愕する。

「私を倒さなければ、お前達は一生この幻影の船から抜け出すことは出来ない」

男は言いなが、立てかけてあったのか細身の剣を持つ。

「それが嫌ならセドナを殺せ」

スラリと剣を引き抜き、眩しく光る白刃が剥き出しになる。

「出来ないのなら
その体に託された力、返して貰おう」

剣を振りかざし、男はルフィ目掛けて走りだした!





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