「一人って淋しくねぇか?」

夜の船のデッキで、ただひとり風に髪やスカートの裾をなびかせながら満天の星を見つめているセドナに、船番をしていたルフィがその背に話しかけた。

セドナが振り返ってルフィを見つめる。
普段から発光しているように見える少女だが、暗闇ならよりはっきりと発光しているように見える。

だが、それはただ肌と服が白いだけで実際に発光しているわけではない。

ルフィはゆっくり歩いてセドナの横にくると、デッキの手すりに手を置いて空を見上げた。

「おれは一人はヤだぞ」

「…?」

「一人じゃ肉も旨くねぇし、冒険も出来ねぇ。
…仲間がいるから、肉も旨くて冒険も楽しく出来るんだ」

「…」

「…だから、そんな一人でも平気みたいな顔すんな」

「…」

真剣な表情でルフィはセドナを見る。

「お前は仲間だ。もう一人じゃねぇ。
…セドナ、一人は淋しいことなんだ。
誰もお前のことを気にしねぇのは悲しいことなんだ。
何千年、何万年一人でいたって慣れねぇことなんだよ」

言葉はわからないのに、ルフィが真剣になにかを伝えようとしているのは分かるのか、セドナは黙ってルフィを見つめている。

ルフィはセドナの細い手首を掴むと

「セドナ、お前はまず一人の淋しさを覚えろ」

「…」

「そうすればお前はそんな顔出来なくなる。
いい加減おれは見たくねぇんだ。お前の、その一人でも平気そうな顔を」

「…………」

「……言葉が通じればいいのに」

顔を俯かせ、小さな声でぼそりと言った。

「そうすれば色んなことを教えてやれる。
色んな話だって出来る。
…なんでお前は言葉が通じねぇんだよ。おかしいだろそんなの。
だってよ…」

掴んでいたセドナの手を引き、ルフィは包み込むように少女を抱きしめた。

「おれと同じで生きてるのに。
通じ合えないなんて変だろ…!」




















どんなに話しても
どんなに触れても

言葉だけは通じ合えない。

だけどルフィは、少女の手だけは離さないと
抱きしめていた腕を解き、そっと白い手と絡ませた…

















翌朝、天気は文句無しの快晴だった。

「次はどんな島なんだろうなぁ〜!」

ルフィはいつものようにメリーの頭に乗って海を見渡している。

ナミはデッキの手すりに寄りかかり、バサリと新聞を開いて

「そうね。なんとなく涼しいから秋島じゃないかしら?」

「うおお!秋島!
飯がうめぇんだよなっ」

「あんたは肉さえ食べれば何でも美味いんでしょ!」

呆れたナミが新聞を読みながらため息をついた。

その時、甲板にいたセドナがやって来てメリーの上に乗っているルフィを見上げた。
じっと見つめながら近くをうろうろしている。

「なんだ?お前も座りたいのか?」

「………」

「…ほら、来いよ」

海に向けていた体を捻ってセドナと向かい合う。
そして少し身を乗り出して手を差し伸べた。

セドナはその手に掴まろうと白く細い腕を伸ばす。

日に焼けた、ゴツゴツとした大きな手と
雪のような、滑らかな陶器のような小さな手が、今まさに重なろうとした……その時だった。

バチ!!

『!?』

まるで、間を引き裂くかのように鋭く黒い電撃が迸る。

セドナは驚き思わず伸ばしていた手を引っ込めた。

「なんだ…?」

「ルフィ!横!!」

突然のことに呆然とするルフィだがナミの叫び声にハッとして横を向く。

デッキには宙に浮く男が立ち、セドナを見ていた。

男は黒い電撃を一筋だけセドナに向かって放つ。

「!」

『セドナ!』

電撃を受けたセドナは、全身に静電気を浴びたような感覚に思わずその場に座り込む。

「やめろ!」

「やめてよ!セドナになにすんのよ!!」

叫ぶルフィとナミの声に船内にいたサンジ達が次々と出てくる。

「何事だナミさん!……!?」

そして男の姿を見てクルー達はすぐに構えた。

男はそんな彼らなど目になく、ただまっすぐ座り込んでいるセドナを見て

「…sedna Adnureak as…」

ルフィはその意味の通じない言葉を聞いた途端嫌な予感がした。

「セドナ!!」

無意識のうちにメリーから飛び降り、そのままのセドナを抱きしめる。
次の瞬間男の足下からなにか黒いものが一瞬にして広がり、ルフィやクルー達すべてを通過した。

「なんだ、これ…!?」

ルフィが状況を把握する前に、その視界は色を無くしてやがて黒一色に染まったのだった…





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