ある日の昼、ゾロははしゃぎまわるルフィ達の横でいつも通り鍛錬をしていた。
何枚もの重量のプレートを先につけて何トンもあるだろうダンベルを持ち、体に汗を流しながら真剣な表情で振っていた。
「…っよし…!」
区切りがつくとゾロはそれを床に置く。するとガシャン!と大きな音がし
「っ!」
ゾロの後ろから小さな悲鳴が聞こえて振り返る。
そこにはセドナが静に佇んでいた。どうやら驚いたようだ。
「なんだいたのか。悪ぃな」
セドナはゾロの言葉に返すことなくジロジロと床に置かれたダンベルを見ながらその周りをうろうろする。
「興味あるか?」
意外そうな声を出すゾロ。
その時、セドナは一番面積が広く重たいダンベルのプレートの上に乗った。
「乗るのかよっ」
乗るだけでなにもしないセドナ。
なんだかほのぼのとした姿にゾロは苦笑を漏らすと
「仕方ねぇ。ちょっと待ってろよ」
ゾロがダンベルを動かすとセドナはすぐプレートから降りる。
棒の片方だけつけていたプレートを両方の端につけなおして横向きにすると、あっという間にバーベルに変わった。
「おいセドナ。お前バランスは大丈夫か?」
「…?」
「バーベルの棒に座れ。そのまま動かしてやる」
言葉の通じないセドナにゾロは言うだけ言って細い腕を掴み、ほぼ無理やりバーベルの棒に座らせた。
そして自分はしゃがみこむとバーベルの棒を肩に置き
「いくぞ」
そう言ってセドナごとバーベルを担いだ。
「…!」
セドナは慌ててバランスを取るようにバーベルの棒をしっかり握る。
「落ちるなよ?しっかり捕まってろ」
どこか楽しげに言って、ゾロは鍛錬を再開したのだった。
腕立てをするゾロの背に乗り、大人しく揺られるセドナ。
ゾロとセドナの間には彼女の体重では物足りないのか何枚も重なったダンベルのプレートが乗せてあった。
海の真っ只中でカモメがいない為か珍しくセドナが途中で降りることはない。
「なんかほのぼのしてて良いわね〜」
「ほんとね」
デッキから見ていたナミとロビンがクスクス笑いながら話していた。
その時突然突風が吹いた。
「あ!帽子!」
後部デッキにいたルフィが叫ぶ。
よく見るとルフィの麦わら帽子が風に飛ばされ、みかんの木の上の方に引っかかってしまったようだ。
セドナはそれを見るとゾロの背から降りてみかんの木へと駆けていく。
「おい!?」
また途中で降りられたゾロが顔を上げると、セドナは届かないのにみかんの木に引っかかった帽子へとジャンプをして手を伸ばしていた。
「いいよセドナ。おれが取る」
見ていたルフィは腕を伸ばそうとすると
「まぁ待てよ」
ゾロが近づいて来た。
「取りたいんだろ。取らせてやれ」
「でもよ。届いてねぇじゃんか」
「こうすりゃ届くだろ」
ゾロはそう言ってセドナを肩に座らせた。
「肩車か!?」
「バカ。肩車なんかできるか。セドナはスカートだぞ」
ゾロにより身長が高くなったセドナは簡単に帽子を取ることが出来た。
そしてそれをルフィに手渡す。
「ありがとな!」
ルフィは満面の笑みで受け取って麦わら帽子をかぶった。
「セドナは高い所が好きだったな」
「…?」
ゾロの呟きが分からずセドナは不思議そうな顔をする。
「しばらくこうしててやるよ」
その後、ゾロはクルー達にからかわれながらもセドナが満足するまで肩にのせた状態を維持していたのだった。
*灯菜様リクThank you!
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