「結局なんにもしゃべらなかったわ」

「んな焦ることねぇだろ。時間ならいっぱいあるじゃねぇか」

「そうだけど〜…せめて名前くらい呼んでほしいわ」

ウソップの言葉にぼやくナミ。

クルー達はサンジが作った昼食を食べながら午後を満喫していた。

ナミはちらりとセドナを見ると彼女は忙しそうに食べ物を食べるルフィの横で静かに座ってゆっくりと食事をしていた。

「ねぇロビン」

「なに?」

「今まで食事をしなくても生きていけたセドナなのに…どうして私達と食事をするようになったのかしら。
サンジくんが出す食事やおやつは食べるけど…小腹が空いたっていう程度のつまみ食いは全然しないわよね」

「そうね」

「やっぱり…昔の経験、かしら…?
人間だった頃の飢え死にが原因…?」

「それもないことはないとは思うけど…
人間の私達に合わせてるだけなのかもしれないわよ?それぞれで満腹になる時間が違うのに彼女はいつもみんなの食事が終わってから終わるもの」

「え…そうなんだ」

「人間だった頃を思い出して生活してるのかもしれないわね」

そんな話をしているとセドナは突然席から立ち上がり、キッチンから出ていく。

「どうしたの?セドナ」

「なんだ、トイレか?」

ルフィの言葉にナミはハッとし

「そういえばあの子っ一度も行ってる所見たことないわ!」

『ええ!?』

全員が驚いている間にセドナは出て行ってしまった。

「その内戻ってくるだろ」

酒を飲みながらゾロが言う。

「じゃあおれはその間にセドナの分の飯を…」

「セドナちゃんの分に手ぇ出すなクソゴム!!」

サンジのするどい蹴りが炸裂する。

「だいたいテメェの分はまだあるだろ!おかわりもある!
レディの食事にだけは手を突っ込むなっ」

「ほんとか!?まだあんのか!?」

「たっぷり作ってるから安心しろ」

「よし!おかわり!」

「その皿まだ残ってるだろクソ野郎!!」

その時だった。

「…Etekusat!」

外からセドナの叫び声が聞こえた。
クルー達はその声に食事をピタリと中断する。

「今の…セドナの声よね?」

「なんか叫んでなかったか?」

チョッパーがキッチンの出入り口がある方向を見ながら言う。

「どうしたのかしら…」

ナミが立ち上がり、キッチンのドアを開けた。
そしてしばらく外を見つめ…

「っセドナ!!」

ナミの切羽詰まった声色にクルー達すべてが警戒し、すぐにナミの元へと駆け寄った。

「どうしたんだナミさん!」

「セドナが…!」

クルー達は開けられたドアから外を見る。
そこからはデッキが見え、デッキには苦しそうに息を上げながらうなだれ座り込むセドナと、その後ろに静かに佇む黒いモヤを纏ったような男がいた。

「あいつ…!」

「カラスマン!!」

ルフィが叫び、すぐに腕を伸ばしてデッキまで飛んで行く。

「セドナっ」

苦しげなセドナの細い肩を掴みその安否を確認する。

「セドナ!」

「セドナちゃん!」

すぐに追ってきていたクルー達にセドナを任せ、ルフィはゆっくり立ち上がって男と対峙した。

「てめぇ…セドナになにしやがった」

ルフィの後ろではサンジに抱かれ苦しそうに息を上げるセドナに声をかけるクルー達。
ゾロだけは警戒したように男を睨んでいた。

男は何も答えない。

「答えろ!!」

吠えるように叫んで男を殴る。

しかし前回と同じように男の体は無数のカラスとなって飛び散るだけで手応えはなかった。

「くそ!またかっ」

ルフィはとりあえず振り返ってセドナの様子を見る。
サンジに抱かれたセドナはさっきよりもだいぶ息は落ち着いたようだった。

「…っ!」

ドンッ!とデッキの手すりを殴るルフィ。
突然のことにセドナは小さく悲鳴を上げて肩をビクつかせた。

「おい!ルフィてめぇ!セドナちゃんを驚かせんな!」

「あいつを…ぶっとばさなきゃダメだ」

「あいつって…さっきの奴?」

ナミの問いかけにルフィは淡々と

「カラス野郎をぶっとばさなきゃ、いつまでもセドナは自由になれねぇ」

『……………』

「カラス野郎をぶっとばすぞ!」

そのルフィの堅い意志に
強い眼差しに

クルー全員が共感した瞬間だった。






- 42 -

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -