「いい加減焦れったいわ!」

夕食も終わり女性陣のお風呂も済み、風呂に行っているルフィ以外のクルー一同はキッチンでお茶を飲んでいた。
一息をつき、ホッとした途端ナミの声が上がった。

「焦れったいって…なにがだよ」

不思議そうにウソップがナミに問う。

「ルフィよ!
あいつセドナが好きなくせに何にもしようとしないんだもの!」

「おいナミ!セドナがいるんだぞっ」

ウソップが慌ててセドナを見る。
しかし本人はのんびりとお茶を飲み、凝視するウソップに気付いて不思議そうに首を傾げた。

「…そ、そうだったな…言葉通じないんだったな。……良かったー…
っていうか!ルフィの奴セドナが好きだったのか!?」

「見りゃ分かるでしょ!」

「いや分かんねぇよ!!」

「おれもセドナ好きだぞ?」

「その好きとは少し違うのよ。船医さん」

キョトンとするチョッパーにロビンが優しく言う。

「あいつが色恋沙汰に興味あるとは思えねぇな。
頭ん中肉だらけのバカ船長がよ」

「本能!本能よゾロ。
きっと本能的に自分好みの異性を嗅ぎ当てたんだわ!だから普通の人が恋愛するみたいに駆け引きが出来ないのよっ
恋の『こ』の字も知らないセドナが相手なんだから、せめて男のルフィがしっかりしなくちゃいけないのに!」

「でもナミさん。あのクソ船長も十分なほど天然だ。
一体どうやってあいつに火をつけるんだ?」

タバコに火をつけながらサンジが問う。

「それにこのままセドナちゃんが誰のものにならなくてもこのおれが…」

「本能で嗅ぎ当てたんなら本能に頼るしかないわ!
倉庫にでも二人を閉じ込めて二人きりにさせれば、ルフィの本能でキスするなり押し倒すなりすればセドナだってルフィを意識し始めるはずよ!」

続くサンジの言葉は虚しく遮られ、燃えるナミが力強く言った。

「おもしれぇ。それであいつが男に目覚めるか見物だな」

「ナミさん考え直してくれ!清楚なセドナちゃんが汚されちまう!!」

「ルフィがどうするかちょっと気になるな…
おれは別に協力してやっても良いぜ」

「私も」

「よくわかんねぇけど…
みんながするならおれも協力するぞ!」

一人はさておき満場一致にナミは満足そうに頷いた。

「じゃあ…さっそく」

「フーッ気持ち良かったー!」

「ルフィ!」

「ん?」

お風呂上がりでさっぱりしたルフィがキッチンにやってきた途端、ナミはビシッと指差した。

「あんた、隠れて摘み食いしたわね!?」

「ゲッ!な、なんで分かったんだ!?」

ナミの出任せだが思い当たる節がいくつもあるルフィは素直に反応した。

「隠し事したって無駄よ!あんたはバカ正直なんだからっ」

「し…仕方ねぇだろ〜?おれ腹減って…」

「罰として。今日は倉庫で寝なさい。出られないよう鍵も閉める、毛布も無し!」

「ええー!?」

「いいわね」

「………はい」

ナミに睨まれたら、たとえ一同率いる船長でも身を小さくして頷くしかない。その迫力は半端でないものだから。
ルフィは渋々頷くと深くため息をついたのだった。

――そして、就寝時間。

ルフィはナミに言われた通り毛布も持ってこず倉庫に雑魚寝していた。
その様子をナミは女部屋から聞き耳を立てて伺っている。

「ふふふ。そろそろセドナの出番ね…」

ナミの近くには毛布を持たされているセドナ。
不思議そうな彼女にナミはニヤニヤしながら

「さあセドナ、ルフィに毛布を届けてあげてちょうだい」

そう言うなりセドナを女部屋から追い出し、すぐに扉を閉めて鍵をかけた。

「?…?」

訳が分からないセドナは閉められた扉を呆然と見つめる。

「誰だ?」

床に寝転がっていたルフィが顔だけ動かして確認する。

「セドナか。なにしてんだ?」

「…………」

セドナはルフィを見るとすぐに駆け寄り、毛布をかけた。

「え…おれに持ってきたのか?」

質問に答えられないセドナだが、ルフィは自己完結させるとニカッと笑って

「ありがとな!もう戻っていいぞっ」

ルフィの笑顔に満足したのか、セドナは女部屋に通じる扉に手をかけた。…だが

「…っ」

鍵がかかっている為、なにしても開かない。

「なにしてんだよ」

変わりにルフィが開けようとするがやはり開かない。

「鍵かかってんのか?…おいナミ!ロビン!
鍵開けてくんねぇとセドナが入れねぇ!」

叫ぶルフィの声に部屋からはシンとして返す声はなかった。

「寝てんのか?…たく、しょうがねぇな」

「……」

「セドナ、一緒に寝るか?」

「…?」

「風邪ひくといけねぇから毛布はセドナが使え」

持っていた毛布をずいっと差し出すが、セドナは首を左右に振った。

「ダメだ。おれは強ぇから大丈夫だけどお前は弱ぇだろ。だから使え」

そう言ってさらに毛布を突き出す。
だがセドナは受け取らず、ルフィから離れて逃げた。

「あっ待てこのやろ!」

逃げたセドナを追いかけ、細い手を掴もうとするがスルリと逃げられる。

「逃げんなっ」

もう一度捕まえようとするがやはり逃げられた。

「よーし、お前っ
おれから逃げられると思うなよ!?」

「……」

「待てセドナ!」

腕を掴もうと手を伸ばす。しかし三度スルリと交わされるが

「逃がさねぇ!」

もう片方の手をゴムゴムで伸ばし、セドナの体にぐるぐると巻きつけた。
そのまま勢い良く引き戻す。

「しししっつっかまーえた!」

「…」

「そんなにおれに毛布を貸してぇならこうしようっ」

ルフィは落ちていた毛布を掴むとまずはセドナの体を離し、両手で毛布を広げて二人同時に包み込んだ。

「こうすりゃおれもお前もあったけぇ!これなら文句ないだろっ」

ルフィは笑いながら毛布の中でセドナを抱いたままその場に寝転がる。

「おやすみ!」

それだけ言ってすぐいびきを上げて熟睡する。しばらくルフィを見つめていたセドナもやがて寝息をたてて眠った。


「なーに!?なんなの!?進展無し!?」

「ふふふっやっぱり2人は自然にいくしかないのね」

「いつもと変わんねぇじゃねぇか」

「これで良いんだよクソマリモ」

「ああ!?」

「なんかつまんねぇな」

「なにがだ?ウソップ」

「お前にはまだ早い」

そんな2人の様子を倉庫の外から、女部屋の中から聞き耳をたてていたクルー一同は不満そうだった。

しかしそんなこと知るはずもない2人は仲睦まじく体を寄せあって朝まで眠っていたのだった。






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