サンジとゾロが戻ってくるとナミは海賊であることが島の住人にバレてしまったことを伝えた。

「この分じゃ海軍に通報してるでしょうね…
ログもたまってるし、買い出しも済んでるし…もうこの島を出ましょう」

「そうね。その方が良いかもしれないわね」

ナミの意見に同意するのはロビンだけでなくルフィとチョッパー以外のクルーすべてが賛成した。

「えー!せっかくセドナの故郷に来たのによぉ!」

「おれも昨日の城と城の聞き込みぐらいしか町まわってないぞ!」

「仕方ないでしょう、バレちゃったんだから。
…それに、ここはセドナの故郷だけど…セドナはこの島にゆっくりしたいと思ってるのかしら」

『……………』

「もしかしたら、思い出したくもない場所なのかもしれないでしょう?
…真意は分からないけど、私個人としてはあまり長居させたくないわ」

ナミの言葉にチョッパーはチラリと静かに佇むセドナを見た。

「…そうだよな…
辛いことがあった島だもんな…」

悲しげな表情になって落ち込むチョッパー。

「ルフィも、わかったわね?」

「…ああ」

今回ばかりはルフィも空気を読み、素直に頷いた。

そして麦わら海賊団の船は帆を広げ、大海原へと出航し、静かな雪振る古城の島を後にしたのだった…




















冬島の海域を抜けた頃には夕方を迎えていた。

厚着をしていたクルー達はそれを脱ぎ、いつもの服装に戻っている。
そしてもうじき始まる夕食を待っていた。

「おーい、セドナー」

そんな中、ルフィはさっきから見当たらないセドナを探していた。

「どこ行ったんだ?」

女部屋に行っても見当たらなかったし、今いる甲板やデッキにもいない。

「じゃあ、あそこしかねぇな」

ルフィが見上げる先には上空にそびえる見張り台。
腕を伸ばして一気に上ると、やはりそこにセドナがいた。

「みーっけ!……ん?」

よく見てみると、セドナは座った状態で眠っていた。

「なんだ寝てんのか。最近よく寝るなぁ、前は寝なくても平気そうだったのによ」

見張り台の手すりに乗っていたルフィはそう言いながらセドナの前に下りてしゃがみこみ、じっとその寝顔を見つめる。

「…………」

サラリとした胡桃色の髪が風に揺れ、白い肌の顔を撫でる。
すらりとした細い手足は頼りなさげで、力をこめて握ったら折れてしまいそうなほど。

不思議な模様のかかれた白い服の裾は、風でハタハタとはためいていた。

「セドナ…」

見つめている内に、自分でもよく分からない感情が押し寄せてきて内心戸惑うルフィ。
無意識の内にゆっくりと手をセドナへと伸ばし、そして肩を掴み、ゆっくり自分の胸へ引き寄せようとする。


―抱きしめたい


何故かそんな気持ちになり、気がつけばもう…止まらなかった。

「…………」

後もう少しで胸の中に収まりきる、その時だった。

「ルフィー!ご飯だぞー!」

「っ!!」

下から聞こえてきたチョッパーの声にハッと我に戻り、思わずセドナを突き放して立ち上がる。
突き放された無防備なセドナはその場にぱたりと倒れ、衝撃にゆっくりと目を開けた。

「…………」

見上げると顔の赤いルフィが自分をぼんやりと見つめている。

「……?」

「なんでもねぇ!」

不思議そうなセドナにルフィはぶっきらぼうにそう言うと甲板にさっさと一人で下りてしまった。
そしてまるで逃げるように、キッチンへと駆け込んだのだった。

「……」

セドナはゆっくりと立ち上がってルフィが逃げていったキッチンへのドアをジッと見つめる。

「あ、セドナー!ご飯だぞー!」

見張り台のセドナに気付いたチョッパーが飛び跳ねながら呼ぶ。
それを見て、彼女はゆっくりと見張り台から下りていった。






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