あれから海軍の巡回船も来なくなり、再びのんびりとした昼を過ごせるようになった。

ウソップとチョッパーが鬼ごっこをして遊んでいるなか、ルフィは木箱に座っているセドナと向き合ってなにかしている。

「…?」

不思議に思ったナミがこっそり後ろから覗き込むと

「笑えって」

ルフィはそう言ってセドナの両頬を掴んでムニーと横に伸ばす。

「ayi」

セドナはブンブンと頭を左右に振ってその手を振り払う。

「笑えよー」

だがルフィは懲りずにまた頬を引き伸ばし

「etemay」

セドナは同じ方法でまた手を振り払う。

「だから笑…」

「なにやってんのあんたはー!!」

「ぶへー!!!」

ナミは瞬時に取り出した天候棒でルフィを殴り飛ばした。
騒ぎに気づいたウソップとチョッパーは、その鬼のような形相のナミに凍りつく。

「セドナ嫌がってるじゃないの!」

「だ、だってよー
セドナのやつ笑ってくれねぇんだもんよ」

殴られた箇所をさすりながらルフィは立ち上がる。

「だからって顔引っ張られて笑えるもんじゃないでしょ!」

「じゃあナミならどうやって笑わせるんだよ」

「そ、それは…」

ナミは返答に困り、しばらく考える。
そしてとりあえず天候棒をしまうとセドナに向き合い

「セドナっほら、にこー!」

そう言って満面の笑みをセドナに向けた。

「…………」

「…………」

「…………」

『ギャハハハハハハ!!』

一斉に笑い声を上げたルフィとウソップ、そしてチョッパー。
だがその声はナミのパンチという名の制裁によって静められる。

「笑うな…っ!!」

『すいましぇん』

「たく…っ
それにしても、本当にセドナって笑わないわね。
私達と一緒にいるの楽しくないのかしら…」

「なに言ってんだ。セドナは笑うぞ」

「…え!?」

「朝セドナと海歩いた時ちょっと笑ったんだ。
すぐ戻ったけどな」

「本当かルフィ!?」

「おれ見たいぞ!」

「よし!セドナを笑わせてみようっ」

『おう!』

ウソップとチョッパーも乗り気になる。
そして三人で集まって何かこそこそと作戦をたてると、ドタバタとどこかへ行ってしまった。

「しょうがないわね。もー…」

呆れたようにため息をつくナミ。ちらりと木箱に座るセドナを見ると不思議そうにナミを見上げていた。

「ほら、にこー」

もう一度試すが、やはり効果はなかった。



















しばらくして再びバタバタと戻ってきた三人。
その後ろにはロビンとサンジ、ゾロもいる。

「あらサンジくん。夕食の仕込みしてたんじゃないの?」

「セドナちゃんのかわいい笑顔を見るためさナミさん。
こんな貴重な瞬間…男として見逃せねぇ…!」

「アホか」

ゾロがつっこむ。

「じゃあテメェはなんで来てんだ!」

「知るか!ルフィに聞け!」

「よーしっまずはロビンだ」

そんな2人などお構いなくルフィは話を進める。

「ロビンっセドナをくすぐれ!」

「ええ、いいわ」

ロビンは一歩前に出てセドナと向き合う。そして構えるとすぐセドナの体から無数の手が出てきた。

「…?」

不思議そうなセドナにその手はわき腹やお腹などをくすぐる。

「…!」

「よし、笑え!」

「〜っ!」

わくわくとするルフィ達。
だがセドナは身を小さく捩るも笑う気配はない。それ所か気持ち悪そうにしている。

「…っetemay ayi!」

なにか言葉を叫ぶ様子を見てロビンはすぐに止めた。

「彼女…くすぐったいという感覚知ってるのかしら」

「どういうこと?」

「ずっと海に一人でいたのなら、こうやってくすぐられることなんてないでしょう?
だから、くすぐったいって分からないんじゃないかしら」

「そっか!そうよね…だったらくすぐったいから笑うなんてできないわよね」

『えー!!』

ルフィとウソップ、そしてチョッパーにサンジは残念そうに叫んだ。

「いい作戦だと思ったんだけどなぁ」

「ねぇルフィ、セドナが笑った時ってあんたと海歩いてる時だったんでしょう?」

「おう」

「じゃあ…楽しいから笑うっていうのは分かるってことね」

「楽しい。…そうか!」

ルフィはそう言うとゾロを引っ張り出し

「セドナ見ろ!笑え!」

「てめっなにしやがる!」

ルフィはどこからともなく二本の木の棒を取り出すとゾロの鼻に突っ込んで、両頬を力いっぱい引っ張る。
そしてずいっ!とセドナの前に押し出した。

「…………」

『…………』

「…………」

「笑わねえじゃねぇかあ!!!」

「ほぶあ!!!」

ゾロに床に叩きつけられるルフィ。そしてそのまま押さえ込まれるとゾロは自分の木の棒を引き抜いて海に投げ捨てると、今度はゾロがどこからともなく木の棒を取り出し

「そんなに笑わせたきゃてめぇでやれ!!」

ルフィの鼻に突っ込んだ。

しかしルフィは乗り気で、立ち上がると自分で変顔までする。もはやセドナを笑わせるというよりも宴のノリでウソップやチョッパーを笑わせていた。

「おいサンジ!お前もやれ!!」

「誰がするかクソゴム!」

「あんたらいい加減にしろ!!」

当初の目的を忘れはてドンチャン騒ぎをするルフィ達に、それを制するように怒るナミ。
もうなにがなんだか分からない状況をロビンが微笑ましげに眺めていた時だった。

「…あら?」

セドナが

静かに笑みを浮かべてルフィ達を見つめていた。

ロビンの声に気づいたナミが振り返る。

「笑った!きゃー!笑ったわよみんな!!」

セドナを見て感激するナミに、事情を知らないセドナは笑いをやめて不思議そうな顔になる。

「おれ見てねぇ!」

「おれもだ!セドナちゃんもう一回笑ってくれー!!」

「おれもだー!」

どうやら男性クルー達は全員見てないようだ。
それからまた、セドナを笑わせようと必死になるのだった。


*ささのは様リクThank you!


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