「おい!海軍の巡回船だー!!」

見張り台から響くウソップの声に、のんびりとした昼は一変して慌ただしくなった。

「急いで船を漕いで!
なんとしても引き離すのよ!」

ナミの掛け声でバタバタとクルー達が走り回る。
ルフィは砲撃に備えて準備をしていた。

「あれ…!?セドナは!?」

「まだ海にいるようね」

「!」

見ればセドナは海上で海軍の船をじっと見ていた。

「セドナっおいで……きゃあ!?」

海軍側の砲撃が始まり、ナミの声は音でかき消された。

「セドナー!」

それから何度も呼ぶがやはり届かない。

「ルフィ!セドナを助けて!」

海の上でオロオロと動きまわり、ついに怯えてか頭を両手で覆って座り込んでしまったセドナを見てナミが焦ったように叫ぶ。

「よし!ゴムゴムの…!!」

腕を伸ばそうとした時、正面から飛んできた砲弾に気を取られ、跳ね返す為にそのタイミングを失う。

「くそ!しつけぇな!」

延々と続く砲弾にルフィ一人では手が負えなくなりゾロとサンジが応戦する。
そして完全にセドナを助けるタイミングを失った。

「セドナ…!頑張って戻ってきてー!」

ふらふらと立ち上がりなんとか戻ってこようとするセドナ。
ルフィ達は砲弾相手に忙しそうだ。

その時人型になってオールを漕いでいたチョッパーが叫んだ。

「ぎゃー!またカラスだあああ!!」

「チィッ!こんな忙しい時に…!」

ゾロが舌打ちをし、砲弾は2人に任せて海に飛び込む。
そしてセドナ目指して泳ぎ始めた。

「おいセドナ!
おれが着いたら海に立たせろ!浸かったままじゃ守れねえ!!」

ゾロはまた座り込んでしまっていたセドナに叫ぶ。

しかし、セドナはまたゆっくり立ち上がると

「……」

両手を胸の前に置いて目を閉じた。

「…!?」

見覚えのあるその姿に思わず泳ぎを止めるゾロ。

セドナの体が発光し電撃が現れ始めた。
その電撃は無数に飛んでセドナへと迫っていた全てのカラスをいとも簡単に消滅させる。

「なんだ…この力…」

ゾロがセドナを凝視しながら呟いた時、再び大きな音と共に電撃が海全体へと広がった。

「うわっ!?」

電撃が体を貫通したゾロだが、しかしなにも異変はない。
状況が変わったのは海軍側の船だった。

「なに…?あれ…」

ナミが呆然と海軍の船を見ながら呟く。
砲撃がおさまったことによりルフィやサンジも傍観出来た。

海が突然ルフィ達の船から遠ざけるように海軍の船を押し始めたのだ。突然制御出来なくなった事態に海軍側は砲撃どころではない。
懸命に指示を送り海の水を制御しようとするが、あっという間にルフィ達の船から引き離され、ついには見えなくなってしまった。

「今の…やっぱりセドナの仕業…?」

ナミがチラリとセドナを見る。

セドナは海に浸かっているゾロを引き上げ、海に立たせている所だった。

















「やっぱり…セドナは凄いわ」

キャッキャとはしゃぐルフィとサンジに胴上げをされているセドナを見ながらナミは呟いた。

「ええ、本当ね」

ロビンも同意する。

「カラスの全滅だけでなく海軍まで追い払ってしまうだなんて…
こんな凄い力、なんで日頃使わないのかしら」

「さあ…私には分からないけど、海全体だなんて莫大なものを意志通りに動かすとなれば…
なにかを犠牲にして動かさなければならないということかしら?
だから日頃はあまり使わない」

「でもセドナは海を司る女神よ?なにかを犠牲にする必要なんてあるのかしら」

「どうでしょうね…」

少しだけ不安げにセドナを見つめるナミとロビン。

船は休まず、次の島へと進んでゆく。






- 25 -

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -