バーベキューを食べながらもはや立食パーティーのような賑わいをしているディナー。

ナミは焼けた肉を食べながらふと何かを思い出した。

「そういえば…セドナってなかなか言葉話さないわね」

「そーいやそうだな」

ウソップが水を飲みながら同意する。

「ペンとかコップとか…持たせる度声をかけて教えてるから、そろそろ一言や二言話しだしてもおかしくないような気がするんだけど…」

「なんら?なんのはらひら?」

「口の中のものちゃんと飲み込んで話しなさい!」

食べ物を限界まで詰め込んでいた為ルフィの頬は頬袋のように膨らんでいる。
ナミに怒られルフィはゴクリと一気に飲み込むと

「なんの話しだ?」

「セドナがなかなか言葉を話さないわねって話してたのよ」

ナミの言葉にルフィはキョトンとする。

「なんだ、お前ら知らねぇのか。
セドナはちゃんと話したことあるぞ?」

『ええ!?』

ルフィ以外クルー全員が声を上げた。

「本当なの!?ルフィ!」

「ああ」

「なんて言ったんだ!?セドナちゃんは!」

「『ありがとう』…だったと思うぞ」

「ありがとう…?物の名前じゃなくて?」

「ああ」

コクリと頷くルフィ。
ナミ達はなんとなくセドナを見てみるが、当事者である彼女は状況がわかっておらず、ただ黙々とバーベキューを食べていた。

「ありがとう、だなんて…
私あまり教えてないのに…
それいつの話なの?」

「この間行った春島の話だ」

「まだ最近じゃない」

「ああセドナちゃん!初めての言葉が『ありがとう』だなんてなんて健気なんだあ!
…やいクソゴム!なんで黙ってた!!」

「忘れてただけだ」

サンジに胸ぐらを掴まれながらもあっさりとルフィは答える。

「ふふっ羨ましいわ船長さん。
彼女の初めての言葉を聞けただなんて」

「レアもんだよなぁ」

クルー達の羨ましがる姿を見たルフィは、だんだんと優越感が湧いてきて

「しししっいいだろ!」

素直に自慢した。
















夕食も終わり、サンジは一人船に戻って食器を洗っていた。

外では船長を始めとするわいわいとはしゃぐ声が響いている。

サンジが洗った皿を横に置いた時、キッチンに誰かが入ってくる気配を察して振り返った。

「セドナちゃん…」

「It helps.」

「な、なんだって?」

言葉の通じないサンジは戸惑う。だけどレディの言葉は理解してあげたいと思い、もう一度聞き返す。

だがセドナはそれ以上何も言わず、近くに置いてあるフキンを持つと洗い終わっている皿を拭き始めた。

「(まさか…手伝うって言ってたのか…?)」

それにしてもよく皿の片付け方を知っているもんだ。
女神としてずっと孤独に海にいたのなら、人間の生活習慣を知らないはず。

サンジがそう考えた時、ふと以前ナミが言っていた言葉を思い出した。


―セドナ、たまにサンジくんばかり見てる時があるのよ。
あの子もしかして料理に興味があるのかしら。


「(そういうことか…)」

セドナは毎日をただのんびりと過ごしているわけではない。
人それぞれの過ごし方をじっと見て観察していたのだ。

そんな事実を知ったサンジは、無性に嬉しい気持ちになった。

「セドナちゃんなりに力になろうと頑張ってたんだな」

到底届きそうもない棚に、精一杯背伸びして皿を片付けようとしているセドナにサンジは近づく。

そしてひょいっと皿を彼女の手から取り上げると棚に片付けた。

「ありがとな」

色んな意味を込めてそう言い、サンジは優しくセドナの頭を撫でた。

彼女の頑張りはおれしか知らない。

そんな

ちょっとした優越感を感じながら。


*香名様リクThank you!



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