船に帰ってきたナミは、船にいるゾロを見て言葉もなく驚愕した。
「……なんだよ」
「うそ…ゾロが無事に帰ってきてる。
方向音痴のゾロが、無事に…!」
「なんなんだよてめぇ!?」
「水汲み頼んだのはいいけど川の場所知らない上に方向音痴のあんたに頼んだのは失敗だったと思ったのよ…
いやああ!怖いわぁ!あのゾロが無事に帰ってきてるぅっ絶対なんか起きるわあ!」
「ぶっ殺すぞてめぇ!」
「さてはあんたっ水汲み行ってないわね!?」
「行ったっつーの!樽見ろ!」
勢いよく樽を指差され、ナミはおそるおそるその中身を確かめる。
樽の中には水が満タンに入っており、その事実にまたナミが驚愕した。
「いやああ!やっぱりなにか起きる前触れだわあ!」
「いい加減にしろてめぇ!」
「ま、それは良いとして」
ころりと変わるナミの態度にゾロは高まった憤りの行き場を無くした。
「ところでセドナは?
…見当たらないけど」
「セドナなら一度帰ってきたルフィとウソップに攫われた」
「ちょっ…ええ!?攫われたって…あの子ワンピースに裸足なのよ!?
なのにこんなジャングルを歩かせてるの?あいつらっ」
「知るかよ。担いでいったから担がれてんじゃねぇのか?」
「よーし!次はこっちだっ」
「ルフィ、落とすなよ?」
ルフィは肩にセドナを担いでジャングルの中をウソップと一緒に歩いていた。
「だいたいなんでいきなりセドナを連れてこようなんて言い出したんだよ」
キョトンとした表情でルフィはウソップを見る。
そしてあっさりとした口調で
「だってよ、こいつ海しか知らないんだろ?
そんなのつまんねぇじゃねぇか」
「…………」
「冒険は海だけじゃねぇ。
町や森にもいっぱいあるってこと教えてぇんだ!」
しししっと明るく笑って先にずんずん進むルフィ。
ウソップはしばらくポカンとするが、やがて苦笑して我が道をゆく船長の後を慌てて追った。
「おいルフィ!教えるのは良いけどよく分からねぇ食いもんだけは食わせんなよっ
…って言ってるそばから食わせようとしてんじゃねええええ!それ毒キノコだろおおおお!!」
賑やかにジャングルを進む三人が、仲間のいる船へと戻ってきたのはとっぷりと日が暮れた頃だった。
「あんた達どこまで行ってたの!」
戻ってきたルフィ達に最初に問い詰めてきたのはナミだった。
『島の反対側』
「どこまで行ってんのよ本気で!しかも裸足のセドナまで連れて!!」
「ちゃんと担いでたから大丈夫だっ」
「そーゆー問題じゃないのよ!
だいたいよく戻って来れたわねっ特にルフィ!」
「もちろん迷ったぞ!」
「自慢気に言うな!!」
ボカッ!とナミのげんこつがルフィの頭にヒットした。
ルフィは『なんで殴るんだよ』と不満げに言いながら頭をさする。
「迷ったんだったら一体どうやって戻ってきたのよ」
「セドナが教えてくれたんだよ。ジャングルの中ムチャクチャに歩いてきたのにまるで道知ってるみたいに指差して教えてくれたんだ」
ウソップの言葉にナミがため息をつきながら
「そう。まあ…そういう面だったらセドナを連れて行って正解だったかもしれないわね」
「そういえば剣士さん。
貴方も彼女と水汲みに行ったわね」
「(ギクッ)」
「ああ!なるほど!だから迷わず帰って来れたわね」
「っうるせぇな!」
ナミのいじわるな茶化しにゾロがキレる。
「なぁなぁ、おれそろそろ腹減ったぞ」
チョッパーがひもじげにサンジを見上げる。
タバコをふかしていたサンジは煙を吐くと
「そうだな。バカ2人に美女も帰ってきたことだし、飯にするか」
「よっしゃー!飯だ飯だあ!
サンジっ今日の飯はなんだ!?」
「久しぶりの無人島だ。バーベキューだよ」
「うっひょー!うまそう!
早く食わせろー!!」
「ちょっとは落ち着けっクソ船長!」
賑やかにクルー達全員でバーベキューの準備を始める。
そんな姿をセドナはじっと見つめていた。
「……………」
小さくなにかを呟いた。
けれどそれは、クルー達に気づかれることはなかった…
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