「カラスが来たぞ!」

謎の男が現れて数日経つが、カラスの襲撃は日々遭っていた。

セドナが攫われないよう船内に入れてやり過ごすという戦法も試したが、カラスは船内だろうとすり抜けて来るのか結局カラスの固まりに引き込まれそうになっていた所を助けだした。

だがカラスとの戦いに慣れてきたのか最近はセドナがカラスの固まりに引き込まれる回数は減ってきた。
今回もまたセドナが引き込まれることなくカラスを全滅させることに成功した。

『It doesn't understand why.』

まるで空から降るように聞こえてきたのはあの男の声。
セドナと同じ言葉の為内容は分からないが、明らかにセドナに向けてのメッセージだった。

『You cannot live in the world on the outside.』

言葉が終わった途端セドナの表情が少しだけ暗くなり、それを見越したように声は止んだ。

「あんにゃろーっ!まだセドナを諦めてねぇのかっ」

久しぶりに聞く男の声にルフィは腹を立てた。

「あんな奴にセドナちゃんはもったいなさすぎるぜ」

サンジが新しくタバコに火をつけながら言う。

「気にすんなセドナっ
なに言われたか知らねぇけどカラスマンには渡さねぇ!」

「おい、カラスマンってまさかあの男のことか?」

「そうだっ」

安直なルフィのネーミングセンスにウソップは頭を抱えて呆れたようにため息をついた。

「セドナ…大丈夫…?」

表情の暗いセドナにナミが駆け寄って顔を覗き込んだ。

セドナはそんなナミから離れると一人海へと向かい、ハシゴを下りていった。

「セドナ…一体なにを言われたのかしら…」

心配そうにセドナを見つめるナミ。
ルフィも、様子を窺うかのようにじっとセドナを見つめていた。

















その日の夜はルフィが船番だった。

みんなが寝静まった時間帯にルフィはすっかり寝こけてしまい、見張り台にいるはずなのに甲板に降り、壁に寄りかかっていびき高らかに眠っていた。

夜風が冷たい外でルフィのいびきが響く中、船内から一人出てきた。

「…………」

それは、毛布を持ったセドナだった。

裸足の足で静かにルフィへと近付き、眠る彼に毛布を被せる。
そして前にしゃがみこみしばらく眠っているルフィの顔をじっと覗き込むように見つめ、ゆっくりと白い指を伸ばしてそっとルフィの頬を撫でた。

その撫でた手が下に降りようとした時、ルフィが細い手首を掴む。

「!?…」

驚いた顔をするセドナに、ルフィは静かに語りかけた。

「昼間カラスマンになに言われたか知らねぇけどよ」

「……?」

「言葉は通じなくてもこれだけは言っておくぞ」

言葉が分からない上にいつもと雰囲気が違うルフィにセドナは戸惑う。

だがそんなセドナをルフィは真剣な表情でまっすぐと見つめ

「お前はおれが認めた仲間だ」

「?……?」

「仲間なら他の奴に渡したりなんかしねぇ」

「………」

「お前は、おれが絶対に守る!」

分からない言葉に不思議そうな顔をする。
けれど、言葉では表現出来ない何かが2人を通じ合わせたのか、さっきまで戸惑い、怯えていたセドナの表情は穏やかなものに変わっていた。

真夜中の、ルフィの誓いはセドナに通じたのか。
静寂に包まれ波の音しかしない船にはルフィとセドナの2人だけ。

掴んだ彼女を手を
まるで離さないと言いたげに、しっかりとルフィは握りまっすぐと見つめていた。






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