「ルフィ!あんたどこまで行ってたの!」

ルフィとセドナが船に戻ってきた時間は、すっかり夜が更けた時だった。

ルフィを…というよりもセドナを心配していたナミが、帰ってきた途端ルフィに叫んだのだ。

「町の外れにあった森だ」

そんなナミなど関係なくルフィはあっけらかんと言う。その言葉に呆れたナミは頭を抱えて深くため息をついた。

「あんたねぇセドナの格好を考えなさいよ。
ワンピースにサンダルなのよ?」

「別に平気だったぞ」

「平気じゃないわよ!セドナを見なさいっなによあの泥だらけ!」

勢いよく指差す先にはナミが買ってあげたパステルブルーのワンピース所か、サンダルをはく白い足までも泥に汚れ
けれどいつも通りの表情で立ち尽くしているセドナの姿があった。

「しししっおれもドロドロだ」

「あんたはいつもでしょ!
あんな格好になって…!ちゃんと手を繋いでたの!?」

「もちろんだ。ずっと繋いでたぞ」

「じゃあなんであんな姿になるのよ…!」

ナミは十分なほど呆れかえると気を取りなおして今度はセドナと向き合う。

「とりあえずセドナはお風呂に入ってきなさい。
服は私が洗濯しといてあげるから」

「…?」

「ルフィはその次よ。洗濯も自分ですること!」

「おー」

「さぁ、連れてってあげるわ」

言葉が通じないセドナの為にナミは手を引いて浴室まで連れて行った。

「サンジー!腹減ったー!」

「まずは服を綺麗にしてこいクソ野郎!」
















風呂から上がったセドナは、またいつもの不思議な模様が描かれてある白いワンピースと裸足姿で船をうろうろ歩いていた。

「他にも服買ってるのに…なんであの服がいいのかしら」

「ずっと着てたから落ち着くのかもしれないわね」

不思議そうなナミにロビンが本を読みながら言う。

「それより、ロビンの方はどう?模様についてなにかわかった?」

「…そうね…」

ロビンは手元にある本の文字を目で追いかけながらしばらく黙り

「気になる内容はあったわ」

「え…」

「でも信じられない上に確証がないからなんとも言えないのよ」

「…一体どんな内容なのよ」

ナミはロビンを凝視し、ロビンはルフィ達に囲まれて話を聞いているセドナを凝視する。

「それは…」

「ギャー!またカラスだぁー!」

チョッパーの叫び声にナミとロビンも反応し、立ち上がった。

そしてセドナを守るように他のクルー達と囲む。

たが、今日のカラスは様子がいつもと違った。
いつもならクルー達一人ひとりに多数のカラスが攻撃し、固まりとなったカラスの集団がセドナを攫おうとするのだが
今回は最初から固まりの状態で現れた。

「なんだぁ?」

ゾロが呟いた時、固まりから人の顔が現れそして徐々に体も現れる。

その人物は、まるで空に浮いているようだった。

『さぁ、帰っておいで。
私のかわいいセドナ』

人はまっすぐセドナを見る。声の高さからみて男のようだ。

『お前達だね。私のセドナを連れまわしてる奴は』

不思議と敵意は感じられない。だがルフィ達を見る男の目は凍えそうなほど冷たかった。

「あ…あんた一体!?」

ナミが問う。
だが男はそんな問いかけなどまったく気にとめず

『お前達は分かっているのか?
その娘がどんな存在なのか』

「知らねぇ。でもおれの仲間だ」

『その娘は海の女神だ』

男の言葉にルフィ以外全員が声もなく驚愕する。

『お前達のような野蛮な海賊とは住む世界が違うのだ。
…さぁ身の程をわきまえてセドナを渡すがいい』

「うるせぇ!髪だろうがなんだろうがセドナはおれの仲間だ!」

「神だっつの」

発音の違いにウソップが突っ込む。

「セドナは渡さねぇ!」

セドナの肩を抱き、ルフィは宙に浮く男を睨んだ。

「そうよ!セドナはもう私達の仲間よっ
女神だろうが関係ないわ!
だいたいあんたこそ何者なのよ!」

『私は海の神となる者…海の王だ。
セドナは私の妻となり、力を私に引き継がせる義務がある』

「つ…妻!?セドナが!?
海の神だなんて…海をどうする気!?」

「そうだ!てめぇにセドナちゃんは釣り合わねぇ!」

「いやそこかよ!」

『海をどうこうする気はない。ただセドナの力が欲しいだけ。
さぁ…我が妻を渡すがいい』

セドナに向かって手を伸ばす男。
ルフィはそれを見てより一層セドナを強く抱いた。

『分からない奴だな』

男はため息をつき、そして一言。

『Plunder』

「!?」

セドナと同じ言葉を発した途端、セドナの体がビクリと跳ねた。

「…!〜っ!!」

「セドナ…!?」

セドナの足はガクガクと震え、やがて目を閉じてズルズルと力無く倒れていった。

「セドナっどうしたの!?」

「セドナちゃん!」

ナミとサンジが慌てて駆け寄り、少し遅れてチョッパーも駆け寄った。

只でさえ白いセドナの顔が更に白くなっている。

「てめぇ!」

ルフィが腕を伸ばして男を殴る。
しかし、男の姿がカラスの固まりに変わりそのカラスが散らばるように飛び去るだけで、その手応えはなかった。





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