「まいったわね…」

ペンと紙、そして前に座るセドナと向き合ってナミは難しそうに眉をひそめた。

「文字と言葉を教えるのがこんなにも難しかったなんて」

そう。ナミは最近、セドナに文字と言葉を教え始めた。

だが、文字も言葉も通じないセドナにはどう教えても通じない。

その上ナミもセドナの文字と言葉を知らないのでどの文字と言葉が、どのような意味を持つのか伝えようがないのだ。

「どうしようかしら…ほんと……」

深く深くため息をつく。
セドナは不思議そうにナミを見つめるだけ。

「基本的な挨拶からって思ったけど、それすらも難しいんだわこの子の場合。困ったわね」

唸りながらまだ白紙の紙を凝視する。

その間セドナはぼんやりと部屋の中を見回していた。

そんな時部屋のドアがノックされる。

「調子はどう?」

入ってきたのはロビンだった。

「まったく進まないわ」

「そのようね」

げんなりとしているナミにロビンはどこか楽しんでそうにクスリと笑った。

「根気よく教えていくしかないわね。これは」

「そうね。
なにかひとつでも単語を覚えたら少しは楽なんでしょうけど」

「そうだけど…ルフィが教える単語だけはどうかと思うわ。
さっきセドナに『肉』って一生懸命教えてたのよ?」

「船長さんらしいわ。
…でも、ある意味いい考えよ?」

「…どうして?」

「挨拶や簡単な言葉もいいけど、物の名前と言葉から教えていく方法でしょう?船長さんのやり方は」

「そうか!なるほど!!
あいつの場合そこまで考えてるとは思えないけど、物の名前と文字を教えていくのは良い考えだわっ」

ナミは手の近くに転がっているペンを握ると

「セドナ」

振り返るセドナ。

「これはペン、ペンよ?」

そう言ってセドナの白い手にペンを握らせる。

「…?」

握らされたペンをじろじろ見ながら不思議そうだ。

「ペン。わかった?」

「………」

「……まだ言葉にするのは無理か」

苦笑しながらナミが言う。

「でも、なんとなく手応えありそう。
みんなにも協力してもらいましょう!」

「そうね」

ナミとロビンはそう決めると、さっそくセドナを甲板へ連れ出し、クルー全員に事情を説明した。

「そういうことなら協力するよナミさん!」

「いいかセドナ、これが『火炎星』といって、おれの……」

「てめぇの技名教えてどうする!」

「なに教えようかなぁ〜っエッエッエッ!」

「まず肉だ。肉を覚えろ!」

それぞれで楽しみが出来たようでクルー達ははしゃいでいる。

「くれぐれも変なことは教えないように。特にルフィ!」

「なんでおれなんだよ」

「食べ物についての名前や文字はサンジくんにお願いするから、それ意外のことを教えてあげて」

「わかったよ。
じゃあおれが今まで知り合ったやつの名前の文字を教えてやる。
たわしのおっさんはな……」

「さっそく変なこと教えんな!」

バシッ!とルフィの頭をはたくナミ。

「わかった!じゃあもっといいこと教えてやる!」

ルフィは叫ぶような大きな声で言うとおもむろにガシッとセドナの腕を掴み、自分の腕は見張り台目掛けて伸ばした。

ゴムの性能で2人は見張り台へと飛ぶとルフィはセドナを離し、大きな声で

「海だ!」

「……………」

キョトンとするセドナ。

「お前が好きな海だ。
おれが好きな海だ!
海!…わかったか?海海海!」


「…」

「しししっ」

ぽかんとするセドナに対し、ルフィは満面の笑みだ。

「セドナはおれに海を歩く楽しさを教えてくれたからなっ
今度はおれが色々教えてやる!」






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