昼食が終わった頃、船首に座ってのんびり海を見渡していたルフィの手を誰かが後ろから引いた。

「ん?」

振り返るとセドナが見上げている。

「なんだ?」

問いかけるルフィには答えず、一人歩き出しそして立ち止まって振り返る。

「?なんなんだ?」

「ついて来いってことじゃねぇのか?」

様子を見ていたサンジに言われ、ルフィは『そうか』と言ってセドナの後を着いていった。

たどり着いたのはセドナが海に降りる時にいつも使う梯子。

彼女はそれを使って海に降りていく。

「おいセドナ。
おれ海は泳げねぇんだよ」

そんなルフィなど気にとめず、先に海に降りるとルフィを見上げて待っている。

仕方なくルフィは梯子を降りて、海面スレスレの所で止まった。

「なんだよ一体」

セドナは腕を掴むと、グイッと引っ張った。

まったく油断していたルフィはつい手を梯子のロープから離してしまい

「うわ!?」

「ルフィ!?」

船上から2人を見ていたサンジが叫ぶ。

バシャーン!

ルフィは海に落ちた。

だが

「…あれ」

普段なら溺れるはずの彼は浮いていた。

「な…なんだ…?」

その上、海面で体を起こして立つことまで出来る。

「ウソだろ…」

サンジも思わず声を漏らした。

なんとルフィは、海上で自由に歩きまわるセドナと同じように、海上で立ち、歩くことが出来たのだ。

「おいルフィ!どーなってんだ!」

「見ろよサンジ!すげぇぞこの下!!」

ルフィに言われた通りルフィの足下の水面下を、目を凝らして見る。

水面下にいたのは、何百匹もの魚が道を作るように群れをなしてまっすぐに並んでいたのだ。

「まさかセドナちゃんも…」

だがセドナの足下には何もいない。

「セドナちゃん…
ルフィの為に魚の道をつくったっつーのか…?」

ワイワイと海上を走りながらはしゃぐルフィとそれを静かに見守るセドナを見ながらサンジは呟く。

「あの子、お礼のつもりなのかもしれないわね」

「ロビンちゃん」

「言葉も意味も通じないけど
あの子をきちんと理解出来てる人はこの船では船長さんだけだと思うわ。
これが本当の『想いあう』ってことかしら」

「いつかくっつくかもしれないわね。あの2人」

やって来たナミの言葉にサンジはガクリと肩を落とす。

「いいなぁ〜いいなぁ〜!
ルフィのやついいなぁ〜!」

「おれ達も歩きてぇー…」

「行ってこいよ」

「馬鹿野郎!怖くて行けるか!!」

チョッパーが目を輝かせながら海を覗き込み、ゾロとウソップがぼんやりと眺める。

クルー達全員に見守られてることなど知るよしもなくルフィは一人はしゃぎ、楽しんでいた。

「すげー!やっぱり海はすげぇな!」

「…………」

後ろからセドナが追ってきた。

ルフィは振り返り、満面の笑みで

「ありがとなセドナ!」

「…………」

「おれ海を歩いたのは初めてだし
こんなに楽しいのも初めてだ!!
やっぱりお前、仲間にしてよかった!」

その時、ルフィは道になっている魚の群れから足を踏み外し、海に落ちる。

だがすぐセドナによって引き上げられた。

しかしルフィの表情は変わらず笑顔だった。

ルフィやクルー達は気づかなかった。

その時

セドナが小さくだが、笑っていたことに。






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