その夜は、結局ルフィもセドナも眠らなかった。
仲間が起きてきてから賑やかな朝食も済ませ、満足したルフィは甲板で大の字になって寝ていた。
近くではウソップとチョッパーが仲良く釣りをしている。
「セドナも一晩中起きてただなんて…
ゾロやサンジくんが見張りの時はそんな事なかったのに」
「もしかすると、彼に付き合ってたのかもしれないわね」
パラソルの下で本を読みながらロビンはちらりと寝ているルフィを盗み見た。
「でも、セドナったら眠たいはずなのにそんな素振りまったく見せないのよ。
今だって海にいるし…」
「ほんと、不思議な子ね」
「そもそもあの子、女部屋のハンモックが足りないからソファーで寝るはずなのにソファーに座ってるだけで寝る姿一度も見たことないの!
このままだと体壊しちゃうわ!セドナは私達のこと信用してないのかしら!?」
興奮するナミにロビンは静かに言った。
「あの子、つまり寝る必要がないってことじゃないかしら」
海で十分歩きまわったセドナは梯子を登って甲板へやってきた。
その時、突風が吹いてセドナは少しだけよろめく。
その足元に麦わら帽子が転がってきた。
「……………」
足元の麦わら帽子を見つめるセドナ。
拾いあげて、なんとなくという風にその帽子をかぶってみる。
「帽子!」
ルフィの叫び声と同時に、黒いソレは姿を現した。
「おい!カラスだ!!」
「やっぱり海から来てる〜!」
慌てふためくウソップとチョッパー。
カラスの数はあっという間に増え、そして以前と同じようにその場のクルー達を襲う。
ナミ達も例外でなく襲われた。
「くっ…!なんなのこのカラス達!?」
「見て!」
ロビンが指差す。
その方向にはルフィの帽子をかぶったままのセドナが固まりとなったカラスの中に引き込まれていく姿があった。
「セドナ!
ルフィ!セドナを助けてあげて!!」
「あ!おれの帽子!」
ルフィが叫んで走る。
「おれの仲間と帽子を返せカラス!
お前らなんかにやらねぇ!!」
固まりから生えるように出ているセドナの白い腕を引っ張り、カラスから助け出す。
そして引っ張り出したセドナを自分の後ろに立たせた。
カラスは、やはり以前と同じように去っていった。
ルフィが2、3羽捕まえていたがそのカラスも水へと変わったのだった。
「やっぱりセドナを狙ってた。
これで確信したわ」
ナミがセドナに近づきながら言う。
「おれの帽子!
なんでセドナがかぶってんだ!」
「なに言ってんの!
セドナは突風で飛ばされたあんたの帽子を拾ってあげたのよ!?」
「なんだそうか。
すまねぇ、ありがとな」
素直に帽子を渡してくるセドナからルフィは帽子を受け取った。
「ねぇセドナ、あなたは狙われる理由知ってるの?」
じっとナミを見るセドナ。
なにかを察したのか彼女は暗い表情で
「I'm sorry.」
初めてみる表情にナミは焦る。
「べっ別に責めてるわけじゃないのよ!?
謝って…るのかわからないけど気にしないで!」
「謝ってくるってことは、やっぱり心あたりがあるのかしら」
ロビンが言う。
「まさか、海賊に捕まってたけど逃げてきた…とかか?」
気になったのかウソップとチョッパーも加わってきた。
「可能性はあるわね。
セドナは普通の人には持てない不思議な力があるわけだし…」
「どどどどっどーすんだよ!
もしその海賊がこの船を攻めてきたら!
まままっまぁどんな海賊がこようと、このキャプテーンウソップ様と8000人の部下がいるからだだだっ大丈夫だけどなッ!」
「ウソップすげぇ!」
「難しくてよくわかんねぇ」
ルフィがあっさりと言う。
「けど、おれは仲間を渡す気はねぇから安心しろ!
お前はおれが守ってやる!」
まっすぐとセドナを見るルフィ。
ルフィとセドナの手は救出時のまま繋がれた状態だった。
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