それから気が付いたら花ちゃんはマネージャーになっていた。でも家の用事があるらしく、部活に出るのは今迄と同じ週二回。火曜日と、金曜日。長く残っているのは金曜日で、火曜日は終わるや否やそそくさと帰っていってしまう(まあそれでも花ちゃんと同じ空間にいられるからよしとしよう!)。
そしてなにより、部活のことで必然的に花ちゃんから話しかけられるという特典つき!!もうこれは嬉しくて呼吸困難ものだ。



「高尾くん、緑間」

おっひゃ。多分言われるのは部活のことだろうけど全然嬉しい。嬉死だ、嬉死。悶える俺をよそに真ちゃんは平然とした顔をしながら花ちゃんとの会話を弾ませる。くっ。お、幼馴染だからって見せつけて……ッ!!だがここで引いては男が廃る。俺も負けじと花ちゃんに声をかける。

「高嶺さん、髪伸びたね」

なんでだよ!!いや確かに伸びたとは思ってたけど!五月から比べたら伸びたなって思ってたけど!!言っても5cmくらいだよ!しかも元から長いよ花ちゃんの髪!!気付かないだろ普通!!ああああもうだめだ。ストーカー扱いされてしまう。頭を抱えるとそうなの、と何だかノリノリで返された。え、え?

「私今髪伸ばしてるんです。ほら、私マネージャーなのに全然練習出られてないから、せめて願掛けでも、って!あ、でも少し図々しいでしょうか……?」
「確かに言われてみれば伸びたような気もしなくはない」
「あんた鈍感だからね……。気付いてくれたの、高尾くんがはじめてです!でも、元から長いのによく気付いたね」

そりゃあいつも花ちゃん見てるから。花ちゃんが好きだから。そんな感情をグッと腹に抑え込み、雰囲気で分かるよ、と笑ってみせた。

「緑間も見習えばいいのに。あ、そうだ。これ、今月の部活の日程表ね!」

にこにこ笑いながら花ちゃんはプリントを手渡してくれる。いつもいつも有難い。花ちゃんからもらったプリントはすべてファイルにいれたあと額縁にいれて飾ってるからね、と心の中で呟いた。

「そろそろだね、IH」
「………」
「勝ってね、絶対」

そう言った花ちゃんの声がいつもより少し淋しそうだった。要らないかもしれないんだけど、と前置きをして花ちゃんは小さな袋からミサンガを二つ取り出す。

「これ。必勝祈願のお守り代わりに、よかったらつけて」
「……手作りか。不器用なのによくここまで上手にできたな」
「ゆりちゃんから教わったの。ほら、あの子手先器用でしょ?」
「なるほどな」

真ちゃんはしばらくそれを見て「貰っておこう」と踵を返しながら言った。ほんっともう、素直じゃないなあ、真ちゃんは。うなじ真っ赤になってんの!


140610.