花ちゃんがバスケ部に来た。目が合った。それだけでも嬉しくて死にそうだけどよくよく思い出してみたら真ちゃん、花ちゃんがマネージャー希望って言ってなかった?それが本当なら、どうしよう。俺、これから試合で負けらんないじゃん。負けるつもりはさらさらないけど。でもともあれ。

「真ちゃんまじでありがとう」
「何なのだよ、急に」
「とぼけんなよ!俺が花ちゃんのこと好きって知ってんだろ?だから俺と花ちゃんを付き合わせようと−−」
「お前は本当におめでたいやつなのだよ」

あれ、俺今ディスられた??おかしいなー。全然ディスられる要素なかった気がするんだけど。前方20メートルくらい先で先輩の話を聞いている花ちゃんを見つめる。はあ。かわいい。

「つーか、花ちゃんマネージャーまじでやんのかな?!だとしたらこれから負けらんないね、真ちゃん!!」
「…さあな。だが、最終的な決断をするのはあいつだ。俺たちではない」
「………」

じゃあ、何で真ちゃんは花ちゃんを連れて来たの?最終的判断をするのは花ちゃんなら、何で真ちゃんは花ちゃんをここに連れて来たの?思っても口に出せなかったのは真ちゃんが花ちゃんを見る目が俺と大差ないと、今頃気付いたから。

真ちゃん相手じゃ、俺、勝ち目ねーな。あ、でも花ちゃん真ちゃん嫌いなんだっけ。じゃああれか、「嫌よ嫌よも何とやら」。それしかない。


(ずりーよ、真ちゃん)


真ちゃんは俺がほしいものを何でも持ってる。それに加えて、花ちゃんまで持ってるなんて。どうしようもないほどのやりきれない思いを俺は誰に、どこへぶつければよかったんだろうか。



部活の帰り道。いつもは真ちゃんと俺の二人だけだったのに、そこには新たに加わった花ちゃんがいた。これはもう、話しかけるしか!さっきの暗い気持ちはどこへやら、俺はカラ元気になっていた。

「え、えと。高嶺さん、だったよね?真ちゃんと仲良いの?」

よりによってそれを聞くか、俺?!あー、もう。ほら、花ちゃんびっくりしてる。真ちゃんのことをちょっと見上げ、次に俺の目を見て真っ直ぐに答える。

「高尾くん、でしたっけ?冗談やめてもらえます?誰がこんなノッポ野郎と…」

うーわー。これあかん地雷踏んじゃったパターンだわ。やってしまった!もうやだ、やってしまった!!土があったら俺を埋めてほしい。来年の春には新しい高尾が芽生えているはずだから。ん??てか、待って?!

「お、俺の名前知ってるの……?」
「ああ。俺がいつも高嶺に話しているからな」
「真ちゃん……!!」

どうしようもないくらい真ちゃんを抱きしめたくなった。


140604.