「行こう!!」
「え……、ちょ。え、え?!」

学校に来た花ちゃんの手を引いて走る。教室を出て、学校を出て、交差点を渡って、花ちゃんの家に行く。道順は分かる。昨日のうちに頭に叩きこんだから。走って走って、後ろの花ちゃんがぜはぜは苦しそうな声を出しているのに気付いて少しだけペースを緩めた。

「たっ、……はあっ、はあ。高尾、くん……っ。い、いきなり、な、はあっ。ど、した、のっ…。はあっ」
「花ちゃんバスケ好きなんでしょ?やりたいんでしょ?どんな稽古よりもバスケが好きなんでしょ?だったらそれを言わないと。伝えないと!」
「ちょ、ちょっと待って−−!!」

花ちゃんは息を整える。少し飛ばしすぎただろうか?深呼吸しながら花ちゃんは誰から聞いたの、と眉根を寄せながら尋ねた。

「真ちゃん。今日、聞いた。全部聞いた」
「……高尾くんには関係ないじゃないですか」





「関係ある!だって俺、花ちゃんのことすっげー好きだし!!」





「…………へ、」

ぽかんと口を開ける花ちゃん。ん?あ、あれ??何か俺、今すげーナチュラルに告白しちゃった?意識して顔が熱くなる。う、わあああああ。俺何言っちゃってんだよおおおお!!もう花ちゃんぽかんとしちゃってんじゃん!!あああああ、もうこれだめだ!勢いだけで告白とか何なんだよおおおお!!

「……だから、関係あるって……、言ってるんですか」
「えッ。いや、その、あの、えと、うーん…??」

な、何て言えばいいんだ、こんなとき……!!?どうすりゃいいんだ!教えて、偉い人ッ。でもここに偉い人がいるわけでも、教えてくれるわけでもなく。

「……高尾くん」
「ひゃいっ(あ、噛んだ…)」

身体が強張る。いや、うん、もうなんか、これ無理だ。試合以上に心臓がばくばくしてる。な、何だこれ。これ何だこれ。思わず目をぎゅっと瞑る。俺の手に花ちゃんの手が重なる。



「嬉しいです!」



「………、うん?」


え、え?一瞬のことで思考が停止する。う、嬉しいです??それはつまり、えーっと、イエスで、はいで、オッケーで、了解で、了承っていう意味の??え?まじで??

「私も高尾くんのこと、好きです」
「う、うそ……」

夢なら覚めないでくれ。頼むから。これが夢だったら俺は一生誰も信じないぞ。人間不信になってやる。

「はい。昨日、高尾くんに名前で呼ばれたとき、ああ私この人のこと好きなんだなあって、思ったんです」
「で、でも昨日お義母さんに高尾くんはそんな関係じゃないですって……」
「あれはですね…」

声を潜めて花ちゃんは言う。「母さん、ああ言わないとうるさくて。嫌な想いさせちゃって、ごめんなさい」とりあえず花ちゃんと付き合えたからもう何でもいいや。うん、でもとりあえず花ちゃんの家には行こう。手を握り直し、花ちゃんと二人で家に向かった。