「………高尾。どうしたのだよ」
「真ちゃんどうしよう、俺お義母さんに嫌われかも」
「は??」

真ちゃんに昨日のことを包み隠さず話した。考えれば考えるほど、話せば話すほどこれから教室で花ちゃんと会うのがつらくなってくる。

「俺絶対嫌われたッ」
「安心しろ。あいつの母親は誰にでもそうだ」
「エッ。そうなの」

なんだよかった。俺めちゃめちゃ啖呵切っちゃったよ。笑って言えばよく言えたな、と目を丸くする。

「だってさ、花ちゃんが好きなバスケをさ。球遊びっつったんだぜ?普通親なら娘の好きなもんやらせんだろーがっつー」
「……そうか。お前には話してなかったな」

え?何を??本当はそれを知りたくて知りたくてどうしようもなかったくせに、俺は白を切った。中学の頃の高嶺だと真ちゃんは言う。ようやくだ。ようやく、花ちゃんの中学時代が分かる。早く言ってほしい。早く俺に聞かせてほしい。不思議そうに真ちゃんを見つめると真ちゃんは話しはじめた。



高嶺と俺は幼馴染だということは知っているな?幼馴染とは言っても、中学でようやく話せた。あいつは女バスのSGだった。初めてした会話は俺に「シュートの仕方を教えてほしい」だった。不服そうな顔をしていたのを覚えている。実際高嶺のシュートはひどいものだった。10回投げても入るのはたった1回か2回程度。才能がないから止めろと母親から言われていたらしいが本人はせめて中学卒業までやらせてくださいと頭を下げたそうだ。
俺は空いた時間さえあれば高嶺のシュート練習に付き合った。フォームを正したり、角度を正確に教えたかいがあって、中二に上がると高嶺のシュート率は上がった。それでもまだ完璧とは言えなかった。
卒業式の日、高嶺は携帯で俺に連絡をしてきた。どうしよう、緑間。助けて。泣きながらあいつは、俺にそう言ったんだ。わけを聞くと母親にバスケの道具を捨てられたらしい。バッシュも、ジャージも、ボールも、鞄も、バスケの専門書も、何もかも。私まだ、バスケやめたくないよ。声を震わせてそう言う高嶺をなんとかしたいと思った。
ここにきて、高嶺が同じクラスにいたのには驚いた。あのときのことを話すともういいのと言う。なにがもういいものかと、俺は嫌がる高嶺を無理矢理に連れ出した。



「…それだけだ」
「………」

真ちゃんの言うことには花ちゃんはやっぱりお嬢様らしい。習い事をしているがそのどれもが嫌いで、一番好きなのはバスケだと言う。それなら、やるべきことはもう一つだ。


140618.