信じられるだろうか。俺は今、花ちゃんと二人で、買い物に来ている。大事なことだからもう一度言う。俺 は 今 、 花 ち ゃ ん と 二 人 で 、買 い 物 に 来 て い る 。

「ごめんね、高尾くん。折角のオフなのに付き合わせちゃって…」
「俺でよければ全然いいよ!!あ、こういうのとかは??」

事の発端は一週間前。花ちゃんにはお兄さんがいるらしく、そのお兄さんの誕生日プレゼントを買いに誘われたのだ(真ちゃんも誘ったらしいのだが断れてしまったらしい)。そこで次に誘われたのが俺。ひょっとしてこれ、遠回しに俺のことデートに誘ってるんじゃないの??思わず二つ返事で了承した。

「あ、いいかもしれませんね!」

にこにこ笑う姿はまじ天使。花ちゃんの圧倒的天使力にやられながらも笑顔を返す。つか花ちゃんお兄さんいたのか……。そこで気付いた。俺、花ちゃんのこと好きだなんだ言ってるくせに彼女のこと何にも知らないんだ。誕生日も、好きな食べ物も、趣味も、何もかも。ちらっと花ちゃんを見る。た、誕生日くらいなら今この流れで聞いてもおかしくないよな??

「そういえば高嶺さん、誕生日っていつ?」
「再来月の25日です。誕生日会家で開くんだけど、よかったら来ますか?」

おっふ。な、なんかさも当然みたいに言われたぞ、今……。でも今ナチュラルに誕生日会誘われた?!再来月の25か。部活ありませんようにありませんようにありませんようにありませんように……。ひたすらに祈った。

「ちょっとこれ買ってくるね」

控えめに笑って花ちゃんは会計へ向かう。とりあえず真ちゃんに誘われた、とメール。どうしよう。どうしよう。どうしたらいいかな?!誘われたんだけど!!真ちゃん!!俺!!生きてる!!震える指でメールを打てば「混ざっているのだよ」と返信がきた。ま、混ざってた、俺?!

「お待たせ、高尾くん」
「うっひゃ」

あ、変な声出た。



花ちゃんの買い物も終わり手持ち無沙汰になった午後。この後の予定を尋ねると「なんの予定もないよ」と微笑んだ。まじ天使。花ちゃん、まじ天使。

「じゃあ、 ゲーセン行く?」

折角花ちゃんと一緒にいるのだ。思い出作りくらいしたいではないか。花ちゃんはというと首を傾げる。え、いや……。まさか。

「高嶺さん、ゲーセン行ったことない?」
「…お恥ずかしながら」

うっそまじでえええ。花ちゃんってもしかしてお嬢さまだったりするのかな??


140611.