dream | ナノ



最近、よく東峰くんとはどうなのって聞かれることがあるんだよね。どうなのって、そんなの私だって分からないから返答に困っちゃって。ねえ、旭。私と旭って、どうなんだろうね?
倦怠期とはまた違うでしょ?だって私、別に、旭に飽きたわけじゃないし。旭はいつだって私に優しいし、そりゃ部活は忙しいんだろうけどさ、一緒に帰ったりしてくれてるじゃん?デートだってしてるし、手繋いだり、キスも、エッチだって普通にしているわけだしさ。うーん、でも強いていうなら、何だろう。トキメキがなくなった?ドキドキしなくなった?でもそれって逆に言えば慣れたってことじゃない?ねえ旭、どう思う?



久々に俺の家に来るなり、名前はそう尋ねた。どうだろうなあ、と答えながら頭の中では確かになと思う。確かに名前の言う通りだ。

名前のことは随分前から気になってて、話も合うし、趣味も合う。それでもきっと、名前は俺のこと「いい友だち」程度にしか思っていないんだろうな。少しだけショックになりながらも彼女と一緒にいられるならそれもいいかと諦めかけたときだった。名前から告白してきたのは。嬉しくて嬉しくて、思わずガッツポーズをして喜んでしまった。

−−こんな俺でよかったら、是非!

その告白から気が付けば6ヶ月と17日。最初こそドキドキしたりときめいていたりしていた。だがそれは最初の3ヶ月だけで、それ以降は何だこんなものかと慣れてしまった。


だからこそ、俺は決めたのだ。俺は今日、この日を以って、名前と別れることを。


「名前、」
「あ、旭!CD返すね」
「……名前、」
「これね、すっごくよかった。とくに5番目の曲が−−」
「名前!」
声を荒げると名前は目を伏せる。多分、もう名前も分かってるはずなんだ。このままじゃいけないということくらい。俺が、言わなきゃ。
「……名前、別れよう」
もし名前がやだと言ったら。別れたくないと言ったら。お願いだからと言ったら。俺は名前を安心させるために、抱き締めて嘘だからと言ってしまうのだろう。でも現実は違くて、名前はしばらく時間を要して頷いたのだ。俺と別れることに、肯定したのだ。


その日の帰り、名前はやけにすっきりした顔で呟いた。ばいばい、旭。だから俺も言ったんだ。ばいばい、名前。


140520
企画シネマさまに提出