dream | ナノ



「菊地原って、性欲ないと思ってた」
俺の下、苗字は別段恥じるでもなくあっけからんと言ってのけた。恥じらわず言えるところが彼女らしいというか、なんというか。
「…苗字は俺のことなんだと思ってたの」
「ん、ん〜……、なんだろうね。聖人君子?」
ムードもへったくれもないような会話なのに、なぜか俺のそこは元気になりつつあってむかつく。
「じゃあ苗字はこれから聖人君子に犯される賤しい女だね」
「なにそれ、なりきりプレイ?」
菊地原ほんとうける。笑いながら俺の首に腕を回し、そのままほとんどないに等しい胸に顔を埋められる。「…思ったよりごつい」「失敬な。伸び代があると言いなさい」「女子の胸は16歳で成長止まるんだよ」「まじかよ。なんかあの、ごめんね」「惨めになるから謝らないで」「ちょっと待てや、どういう意味だコラ」あまりにも会話がいつも通りすぎて、本当にこれから一線を越えるのかと逆に不安になってくる。
そっと制服越しに苗字の胸に触れれば布越しに彼女の鼓動が伝わった。
「…すごい、緊張してる?」
「あんた私をなんだと思ってんの」
「聖人君子」
2秒くらい苗字と目を合わせ、すぐさま制服のボタンを外しブラジャーと共に胸を弄る。わ、苗字のブラジャーピンクだ。なんがすごくらしくない。きっと今日のために買った卸したてなんだろう。
「あんた今らしくないとか思ったろ」
「うん、思った」
「おま」
「わ〜、上下お揃い……」
彼女を無視してスカートをめくり上げるとブラジャーと同じ淡いピンクのパンツからすらりとした脚が伸びていた。「ぎゃあああ、やめろばか。めくるな、めくるな!雰囲気を大切にしろ、ばか!」…苗字なんかでも雰囲気とかムードとか、気にするのか。慌ててスカートに手をかけ伸ばす彼女の手首を掴む。
「…ねえ、苗字。そろそろ、いい?」
「……いっ、いちいち聞くな!ばか!!」
さっきまでの威勢はどこへやら、苗字は今やすっかり大人しくなってしまった。ふと笑いが込み上げ、口元が緩んでしまう。
「…苗字」
「な、なに…」
彼女の髪を一束掬いあげ、唇を落とす。あーあ、苗字のせいで俺までらしくなくなってしまった。
それもこれも、普段男勝りで下着は上下ばらばらなくせしてこういうときに嫌というほど女ということを意識させる苗字のせいだ。
「俺に性欲ないって言ったこと、後悔させていい?」
「…生意気言って。私より先にイッたら許さないんだから」
指を絡めて、唇を落とす。俺の心臓はこの後に及んでまだ高鳴っている。どうやら俺も彼女同様、緊張しているようだ。


150609.