dream | ナノ



※間接的なリョ桜要素有※


























流石にクリスマスイブともなればどこへ行っても混んでいるようで、それは電車内にでも適応することだった。今日は越前の誕生日ということで、日ごろ後輩である桜乃ちゃんがお世話になっているからと半強制的に街へ繰り出した。今後とも桜乃ちゃんと末永くお幸せに、と冗談めかしてお揃いのキーホルダー(ちなみにお揃いって、私とじゃなくて桜乃ちゃんとね!)を買ってあげた。ただし越前がそれをちゃんと学校のカバンにつけて来るかは不安なところだ。冬休みが終わって、桜乃ちゃんと越前が顔を見合わせる姿を想像するとそれだけでご飯三杯は軽く余裕だ。

「わっ」
「!」

後ろから人に押される。それでも後輩である越前だけはしっかり守らなくてはと彼の後ろの壁に肘をつく。いわゆる、肘ドンの状態。そうすると、否応にも今まで以上に越前と顔が近づく。う、わ。改めてみると憎たらしいほど綺麗な顔してやがるな、この野郎。こりゃ桜乃ちゃんも惚れてしまうわ。いや、私越前は全然好みじゃないけどね。むしろ男テニ内で一番の好感触は大石だし。まじまじと越前の顔を見ながらやっぱり違うなあと改めて考えていると、「あ、の」。申し訳なさそうな越前の声が返ってくる。

「大丈夫、越前?」

ふっと微笑んで安否を確認。そうすると越前は顔を真っ赤にしかなら首を縦に動かし始めた。変なの、越前のヤツ。





折角のクリスマスイブなのに苗字先輩に半強制的に外へ連れ出された。俺の誕生日という情報をどこから嗅ぎつけたのか連れてこられたのはファンシーなお店。いかにも女子御用達といった感じのそこだった。何をされるんだとはらはらしていると「さあ、好きなものを選ぶがいいさ」と無い胸(不二先輩曰く「A」)を張られた。びっくりして、目を丸くすると早くと急かされる。何なんだ一体……、そう思いながら傍にあった桜のキーホルダーを取る。何でもいいから早くここを出たい。それを苗字先輩に渡すとなぜかにやっと笑われた。
「お会計してくるから、悪いんだけど外で待っててくれる?」
「っす」
しばらく外で待ってると小さな袋を持った先輩が出てきた。「今後とも桜乃ちゃんと末永くお幸せにね」と言いながら渡してきたからわけがわからなかった。何でここに竜崎が出てくるわけ?


帰りの電車内で事件は起きた。いや、事件って呼べるほどたいしたことじゃないって、多分先輩は思ってるんだろうけど、俺にとっては事件だった。
混んではいたけど、まあこれくらいなら大丈夫だろうと先輩と話をしていたときだった。いきなり、苗字先輩の顔が近づいてきた。えっ、えっ。今まで一度だって異性とこんな風に顔を近づけたことがなかった俺は困惑した。それに加えるように、いきなり苗字先輩が女という事実が眼前に迫る。
それだけじゃなくて、こともあろうか先輩は俺の後ろの壁に肘をついた。何だこれ。何だこれ……!!普段されないことを立て続けにやられ心臓はばっくんばっくん鳴り響く。
ちらと苗字先輩の顔を見ると、すごく整った顔をしていた。何だこれ。何だこれ。もう脳内はパニックだ。「あ、の」ようやく声を絞り出すと先輩と目が合う。目尻が強く、きりっとした瞳に吸い込まれそうになる。

「大丈夫、越前?」

次の瞬間にはその瞳が弓なりになったもんだからもうこっちは上手く呼吸をしている気がしない。顔が熱く、思わず視線を逸らしてしまった。きっと変なやつって、思われてるんだろうな。


141224.
リョーマHappy birthday!!