dream | ナノ



イライライライラ。視界の端っこのほう、うろちょろ動いて愛想を振り撒く切原を睨む。
今日、9月25日は彼の誕生日(驚くことなかれ、切原の教室に入って来ての第一声が「俺今日誕生日〜!」である)なようでクラスの一人一人に誕生日プレゼントを物乞いしている。
といっても切原は男子のほうばかりで、なかなか女子の(というか、あたしの)ほうには来やしない。別に来てほしいわけじゃないんだけど。ちらりと自分の鞄を横目で見る。実はあたしの鞄の奥底には切原への誕生日プレゼントがきちんと用意されていたりするのだ。
ムカつくことにあたしはあれが好きなようで、一日中暇さえあればあれのことを考えてしまう程度に重症だ。勿論あれはあたしの好みのタイプではない。なぜならあたしは、真田先輩のような人が好きなのだから。あんな、子どもみたいなのはタイプじゃない、はずなのに。

(ばっかじゃないの)

切原も、あたしも。そのときだ。ばちん。切原と目が合ってしまった。う、わー。最悪。切原はにやにや笑いながら「苗字〜」とあたしの机に腰かける。
「俺、今日誕生日なんだぜ」
「……知ってるわよ。それがなに?」
「プレゼント、ねえの?」
「………」
対して悪びれた様子もなく切原は言った。
「あるわよ」
「だよな〜。って、え。あんの?」
目を白黒させながらあたしを見る。言って、しまった。どうしようどうしようと頭の中で言葉を考える。
「あげてもいいけどその代わり」
一旦言葉をきって、彼を見つめる。翡翠みたいに綺麗なグリーンがあたしを映す。心臓が少しだけ高鳴る。
「真田先輩の誕生日、教えてよ」
「副部長?!えッ。なに、苗字副部長好きなの??!」
切原はあからさまに狼狽しはじめた。
「いーから早く教えなさいよ」
手帳を広げると彼は渋々といった様子で教えてくれた。これみよがしにかわいいシールまで貼って、また手帳をしまう。
「はい、じゃあこれ」
鞄の中から薄い黄緑のパステルカラーの袋を渡す。きょとんとしながらあたしと手元の袋を交互に見つめる。
「なによ。くれって強請ったの、あんたでしょ」
「いや、そう、だけど、」
しばらく黙り込む彼にはっとした。あたしってほんとばかだ。これ用意してたの、バレるじゃん。しかも中身に至っては、きちんと包装用紙まで巻いてるし。
「や、やっぱ返して」
「はあ?!嫌だよ。何でもらったもん返さねえといけねえんだよ!」
絶ッ対ぇ嫌だ、とあたしのあげた袋を抱きかかえる。そんな切原は耳まで真っ赤だけど、きっとあたしもそれに負けないくらい顔が赤いんだろう。


140929.
赤也ちゃん Happy Birthday!!(大 遅 刻)