dream | ナノ



※男主

















「丸井ってもしかして節制中?」
は、と間の抜けた声が出てしまった。
「何で、こんな変な時期に節制しねえといけねえんだよい」
全国大会も終わった、こんな時期に。「だよなあ、俺も思った」じゃあ何で。苗字に尋ねると呆れ顔と共に盛大な溜息をつかれる。少しムッとして、早く言えよとぼやく。
「怒るなよ」
「怒ってねえし」
「お前最近ほんとどうした」
カルシウム足りてないぞ、と飲みかけの牛乳を差し出してくる。いちご牛乳がいいと文句を言えば贅沢言うなと笑われる。最終的にはいいから受け取れと無理矢理牛乳を押し付けられてしまった。
「飯。最近前よか食ってねえし、むしろ残してんじゃんか」
「………まじ?」
「自覚なかったのかよ」
「全然全くこれっぽっちも」
苗字から受け取った牛乳を直に飲む。
「ストローあんだからさあ」
彼が困ったように笑う姿はどことなくジャッカルに似ていた。そういえば、最近ジャッカルと会ってねえなあ。あの夏の日以来まともに顔合わせてねえし、そもそも俺が避けてんだから当たり前か。
「何かあった?」
「………」
牛乳の飲み口を閉じる。話すか?苗字に?自分の感情剥き出しにして?何で?理由もなしにあんな話しされても。それも一方的に。苗字はいいやつだ。部活は違うけど、話しは合うし気も合うし、何より一緒にいて気が楽だ。
幸村くんが入院して、テニス部内の空気がぎすぎすしてたときも苗字に励まされて部活に行っていた。俺が真田の悪口や柳に対する不平不満を口にしたときも黙って聞いてくれた。そんなとき、たいてい苗字は帰り際に食べ物を奢ってくれた。
「俺さ、いつも言ってると思うんだけど」
彼が口を開いてはっと我に返る。目の前の苗字を見ると悲しそうな、今にも泣きそうな顔をしていた。
「丸井は何でもかんでも一人で抱えこみすぎなんだよ。俺ら親友だろ?もっと頼ってくれよ」
「………苗字、」
何でお前がそんな顔してんだよ、なあ。そんな顔してるお前に、話せるわけなんてないだろ。あっと苗字は声をあげ、途端慌て出す。
「もっ、もしかして親友だと思ってたの俺だけだったり……?クセェ台詞って思ってたり?!!」
「……は、」
いきなり突拍子もないことを言い出す。さっきとは違った意味で泣きそうになっている苗字を見ると噴き出してしまう。
「ああ、やっぱり??!
」わっと机に突っ伏す。そんな彼の背中を見て、そっと撫でる。「丸井?」涙目の苗字が顔をあげる。

「ありがとな」

いつかお前にだけは、言えるようになりたい。


140929.
ちょっと言葉足らずなので補足。
ブン太が夢主に話したいと思ってるのは全国大会の桃城の時間稼ぎ云々の話 ミュージカルの1stの影響をフルに受け継ぎました、はい
あのあと絶対ジャッカルと話してないだろ〜という妄想爆発…… 2ndでは役回りが反転していたのでジャッカルバージョンも書けるようなら書きたいですね(願望)