dream | ナノ



女の子の着替えと買い物は長いと言ったのは誰だったか。かくゆう名前ちゃんも、かれこれ数十分間似たようなスカートを見比べ悩んでいる。黄色のストライプ柄と、パステルカラーの花柄の二つで。よくもまあそんなに悩めるものだと関心してしまう。
常日頃から一緒にいてあまり意識することがないのだが、こういった姿を見ると名前ちゃんもやはり女の子だと気づかされる。なかなか決まらなくてごめんね、悠人。名前ちゃんは申し訳なさそうに眉根を下げた。
「別にいいよ。ゆっくり選んだら?」「本当、ごめんね」

そう言って名前ちゃんはまた二つのスカートをまた見比べる。二つとも買っちゃえばいいのに。何着ても似合っちゃう彼女のことだからどっちを選んでも外れはないだろう。
「ね、どっちが似合う???」
「………」
今履いているジーパンの上からスカートを重ねるようにして見せる名前ちゃん。「どっちでもいいんじゃない?」どっちも似合ってるから。胸中でそう付け加えた。きっと隼人くんなら、率直なその意見を名前ちゃんにそう言うんだろう。それが俺と、隼人くんの違い。
真面目に答えてよ、と彼女は少しむっとした様子で言う。小さく溜息をついて、ストライプのほうを指差す。
「そっちのほうが、隼人くん好きそう」
「ほんとに?」
「ひっどいの、名前ちゃん。弟の意見はちゃんと聞こうよ」
笑ってみせるとストライプのスカートを暫く吟味。その後、買ってくるとそれを持って店内に入っていった。ごめんね、名前ちゃん。そのスカート、多分隼人くんは嫌いだよ。








「名前ちゃんさあ」
「うん?」
買い物帰りに寄った近くのスイパラ。さすが隼人くんの血が流れているだけあって俺たちの目の前には既に30枚近く皿が積まれている。
「隼人くんのことになると女の子になるよね」
「ちょっとそれどういうこと」
名前ちゃんのお皿に乗せられていた最後のチョコレートケーキを頬張ったら睨まれた。
「いやあ」
曖昧に笑ってみせた。




不毛だなあと思った。と、同時に、中学に上がったばかりのころ数学で習った平行線を思い出した。双子の姉貴である名前ちゃんが好きな俺も、実兄の隼人くんが好きな名前ちゃんも。決して交わらない平行線。交わってはいけない平行線。
「何で兄弟なんかで産まれてきちゃったんだろうね」ぽそりと呟いてみた。
名前ちゃんは「そうだね」と下手くそに笑った。
彼女にはきっとそれが、自分と隼人くんのことを案じてるように聞こえてるはずだ。それならそのままでいい。俺の想いには一生永遠に、気づかないままでいい。



140812.
企画きみにさよならさまに提出