dream | ナノ



※初期北
※福荒大前提
























マニキュア塗ってあげる。そういうなり靖友は有無を言わさず私の指にやすりをかけはじめた。いきなりどうしたの、と驚きながら彼を見る。すると靖友はにっこり笑って、でも私の指から目を離さず、
「名前チャン、指キレーだから」
「…靖友ほどじゃないよ」
「まあね」
少しは否定しなさいよ、馬鹿。靖友の頭をぐしゃりと撫でる。やめてヨ、とは口では言うが彼は満更でもなさそうな顔をしている。親指から小指まで丹念にやすりをかけられていく自分の指をぼんやり見つめる。
「名前チャンさあ、」
「ん?」
突然靖友に話しかけられ、意識を指先から彼に移す。相変わらず私の指に集中している。下睫毛、長いな。てか肌白。こいつ、本当に運動部かよ。頭の片隅でそんなことを考える。なに?尋ねたら靖友は、少しだけ私を見つめて、また私の指に視線を戻す。両手ともやすりがけが終わった。
「好きなんでしょ、福ちゃんのこと」
「………」
福ちゃん。一瞬誰のことを言っているのか分からなかったけど、福富だと気付いた。なーんだ、分かってたのか。伊達に福富のセコムやってないよねと笑うと茶化さないのォと返される。右手の指にスカイブルーが乗せられていく。
「俺も福ちゃん、好きなんだ」
「……へえ?」
それは、どういった意味合いで???どっちの「好き」なの???靖友って、そっち系だったの???いろいろ聞きたいことがあったけど、私の口から出たのはそのどれでもない「じゃあ私たちライバルってこと?」だった。まっさかあ。靖友は笑う。
「俺、名前チャンも好きだヨ。あ、福ちゃんも名前チャンも、恋愛対象として、ネ」
「……………」
「何その顔。かわいーネ、誘ってんの???」
「いやあ」
靖友はホモだと思ってたから、まさか選択肢に私が存在していた、なんてさすがに失礼すぎて言えなかった。何だっけ、両性愛者?ってやつ、確かバイだっけ。
「……え、ええ〜…」
「ちなみに福ちゃんとは経験済みね。俺が女役」
「まあああじいいいでええええ」
福富に告白する前に玉砕してしまった。夜の福ちゃんすごいヨと笑う靖友。そんな情報、靖友伝いで知りたくなかった。どうせなら実際福富とそういうことして、知りたかった。左手の指にもスカイブルーが乗った。
「でもね、俺名前チャン大好きだからさ。特別に応援してあげるヨ」
「よく言うよ。福富渡す気なんて、これっぽっちもないくせに」
「あっは、バレた?」
出来たヨ。指に目を落とすと綺麗なスカイブルーで染まっていた。綺麗な空色。チェレステの色。いつか福富が乗っていた、ビアンキの色。今になってはもう、靖友の色だけど。
「…なんか、靖友にマーキングされてるみたいでヤだな」
「俺だけじゃないヨ。それ、俺と福ちゃんのマーキング」

福ちゃんもねえ、名前チャンのこと好きだって。含み笑いをする靖友の真意なんてこれっぽっちも分からなかった。


140806.
もしかしたらこの設定受け継いで長編書くかもしれない(予定は未定)