dream | ナノ



※ジェ→リリ要素有※




ジェームズはあたしが連んでる男子の中で、恋愛感情を含めて好きだ。あたしが男勝りというのもあるけれど話が合うし、それに何より一緒にいて楽しい。
それでもただ一つ、あたしには解せないことがある。それは、やつがあたしを抱いているとき、あたしを見ていないことだ。あたしを通して、必死に愛しいあの子とあたしの共通点を探している。それが堪らなくムカついて、彼があの子の共通点を探し出すより先に派手に喘ぎ、自分から腰を振る。可哀想なジェームズは、あの子とあたしの共通点を探し出す間もなく、まるで犬のようだと笑いながらあたしを抱くのだ。あたしはそんなジェームズが好きで好きで堪らないのだ。



今日も今日とてジェームズとの行為は激しかった。振り乱した髪を掻き上げながら彼の腕に頭を乗せると汗臭いよと笑われる。まあ、誰のせいだと思ってんのかしら。この野郎。
「ジェームズのほうが汗臭いわよ」
「男はこれくらいのほうがいいんだよ」
「………」
ねえジェームズ。あんた気付いてないんでしょうけど、セックスしてるとき、愛しいあの子を呼んでたのよ。耳障りだったから仕返しに掻き消すように喘いでやったの。もしかしたらあたしを連れて来たこと、バレちゃったかもね。意地悪にそう言ってやろうと思った。でも言いたい言葉を全部飲み込んで腹に溜め込む。口にしたらあたしが泣いちゃいそうだったから。結局自分が一番カワイイんじゃない。思わす自嘲してしまう。
「ねえ、ジェームズ?」
「なんだい、名前」
名前。ああ、ようやくあたしの名前を呼んでくれたのね。嬉しくて思わず笑みが零れてしまった。
「あの子なんてヤメてさあ、あたしにしてよ」「………」

いきなりジェームズが腕を引き抜く。あたしの頭はすっぽりシーツに埋まってしまった。あ、まずい。咄嗟に脳が下した判断に従順に従う。
「…なーんちゃって、ね。ジェームズ、嘘よ、冗談。冗談だから」
やだ、ちょっと、泣いてるの?嘘でしょ。









僕には好きな人が二人いる。一人は名前。寮はスリザリンだけど、一緒にいて楽しい女の子。もう一人は言わずもがな、リリーだ。リリーは同じ寮で、一目惚れに近かった。
その二人のうち、どっちのほうが進展しているかと聞かれたならばそれは名前のほうだ。月2くらいのペースで、セックスだってしている。彼女にとって僕ははじめての相手だったようで、いつもは強気な彼女がそのときばかりはしおらしかった。
そんな最中、僕は名前の中にリリーとの共通点を探しているのだ。それは今も変わりない。爪の形、手の大きさ、声。大概は探し当てる間もなく、名前の大きい喘ぎと激しい腰の振りで現実に引き戻される。きっと名前は分かっているんだ。僕が、名前の中にリリーを探していることを。名前の中にリリーを探せなかった僕は、可哀想な名前にまるで犬のようだと笑いかけるのだ。それでも僕が自分から別れを告げられないのは、名前が好きだからだ。




いつも以上に激しかった行為が終わった。名前は振り乱した髪を掻き上げる。その仕草を見て、また僕のちんこが元気になるがすぐに別のことを考える。僕の腕に頭を乗せた彼女からはほんのりと汗の匂いがした。そりゃまあ、あんだけ動いたら当然か。
「汗臭いよ」
笑ってやると瞼の落ちそうな目で僕を見つめる。その目が煽情的でむらむらと欲情が沸き上がる。
「ジェームズのほうが汗臭いわよ」
「男はこれくらいのほうがいいんだよ」
「………」
名前、本当はね。僕は知っているんだ。きみがセックス中に喘ぐ意味を、激しく腰を振る理由を。どちらかを選ぶときお前はどうするんだ?いつかシリウスが言っていた言葉を思い出す。リリーをとるか、名前をとるか。いっそのこと、名前が身勝手なことを言ってくれれば別れられるのに。
「ねえジェームズ?」
「なんだい、名前?」
ああ、そうだ。彼女は名前だ。リリーではない。簡単な話だ。でも僕は、名前もリリーも、二人とも好きなんだ。簡単な話なはずなのに、割り切れなくなってしまう。
「あの子なんてヤメてさあ、あたしにしてよ」
「………」
彼女の頭を支えている腕を引き抜く。すると名前の頭はシーツに沈む。言うか?でもきっと、言うタイミングは今しかない。言え、言うんだ。ジェームズ・ポッター。口を開きかけた瞬間だった。
「…なーんちゃって、ね。ジェームズ、嘘よ、冗談。冗談だから」
ああ、だめだ。やっぱり僕は名前を裏切れない。ごめんよ、名前。僕は多分、これからもきみを傷つけてしまう。


140719.
某テーマパークでポタエリアが開いたのでその記念に……