dream | ナノ



一瞬我が耳を疑った。今、彼は、ベルは、なんと言ったのだ。分からない。否、分かってはいる。理解もしているんだ。ただ、突然のことに頭がついていかないだけで。何で私なの。アニじゃないの。言う相手、間違えてんじゃないの。私、アニじゃないよ。言いたいことはたくさんあったけど私の口をついて出たのはそのどれでもなかった。
「……ベル、酔ってるでしょ」
「酔っ………、飲んでない、飲んでない」
いやいやだって酔ってなかったら言わないじゃん、そんなこと。どうしちゃったの、ベル。いきなりさあ。驚きのほうが勝って、何も考えられない。あ、もしかして、これは。
「アニに伝えろ、ってやつ??もー、ベルったらヘタレすぎ。それくらい自分で言えよー、男だろ?」
笑いながら自分にそうだと言い聞かせる。そうに決まってる。だって、そうじゃないとおかしい。つじつまが合わない。それにしてもベルのやつ。いくら私がアニと仲良しだからって、同郷なんだからそれくらい言えばいいのに。ヘタレさんなんだから、もう。
「ち、違っ……、名前、俺の話ちゃんと聞いてた?」
「聞いてたよ。だからこの親切な名前ちゃんがアニに伝えてあげようと−−」
「名前!!」
いきなりベルが大きな声を出すもんだから目をぱちくりさせてしまう。その場にいる人たち全員の視線が私とベルに集まる。慌てて口早に謝まる姿は全くもってらしくない。じゃあさっきの言葉はアニにではなく私に?いや、ないな。だって私はベルが好きだけどベルはアニが好きで、アニも多分ベルが好きで。だから、そんなことは絶対に、ないわけで。
「…もう一度だけ、言うから。ちゃんと聞いてね?」
「う、うん?」
耳まで真っ赤にさせながらベルは私を見つめる。「名前、」私の手を取り、ぎゅっと握る。彼の指が私の指に絡まる。心拍数が一気に跳ね上がるのが嫌でも分かる。
「あの……、あのね、」
「う、うん」
いつになく真剣な表情のベルにどきどきする。な、何かこれ、恥ずかしい、な。


「俺、名前のことが−−」





はたと目が覚める。あ、起きたんだ。降ってくるベルの声に顔を上げるとにこりと微笑まれる。
「おはよう、名前」
「……オハヨウ?」
欠伸を一つして身体を起き上がらせる。本格的に寝ていたようだ。いつかジャンに言われた、私の「どこでも寝られる図太い神経」とやらは鈍ってないらしい。
「すごく幸せそうだったよ。どんな夢見てたの?」
「……ベルに告白されたときの夢」
「えっ」
驚く彼の首に腕を回し、唇を落とす。
「ベル、好きよ。たとえあなたが巨人でも構わないわ」
「……名前、」
ベルの、この愛らしい笑顔を、私は守らなくてはならない。その代償がどんなものであれ、それが私の指名なのだから。


140716.
企画ゆめをみていたさまに提出