dream | ナノ



※初期新開
※性格、口調等の捏造あり




わたしの新開くんに対する印象は「何か恐い」、「得体が知れない」、「暗い雰囲気」と、いずれも決して好印象ではなかった。クラスでも彼は特別浮いていて薄気味悪いと噂されるほど。そんな彼はわたしの隣の席にいて、そりゃあもういついちゃもんつけられるかわかったものじゃないからすごく恐い。友人たちからは「何かされたらすぐに言ってね」と小心者のわたしを気遣うように声を掛けてくれた。新開くんの隣の席になってから数週間。早くも次の席替えを祈っていた。



「ねえ、教科書見せて」
「え……、」
新開くんに突然声をかけられ、思わず思考が停止してしまう。教科書見せて。きょうかしょみせて。キョウカショミセテ??言葉が脳内でゲシュタルト崩壊しはじめたとき、靖友にさ、と新開くんは続けた。
「貸しっぱだったの、忘れてた」
「………はい?」
「だから見せて」
「………」
靖友って、荒北くんだよね??まさかクラスメイトなのに見せないというのも不思議な話なので、いいよ、と小さく答える。すると新開くんは少しだけ目を見開いて、ありがとう。やっぱりぼそりとそう呟いて席をくっつける。
「…苗字、うさぎ好きなの?」
「えッ」
な、何でそのことを。どきどきしていると筆箱についてあるうさぎのチャームを指差される。
「それ、俺も持ってる」
「ほんと?」
「ほんと」
そう言って彼は携帯を出す。確かにそこにはわたしのと同じうさぎのチャームが全種類あった。
「わ、ほんとだ。あ、クロウサもあるんだね。いいな」
「苗字は持ってないの」
「うん。シロウサとオレンジウサとマーブルウサはあるんだけどね。クロウサだけ……」
「ふうん」
かわいいなあ。やっぱりクロウサが一番かわいいかも。わたしも早く集めなきゃ。残すはあとクロウサだけなんだし。今日の帰りにでも買おう。すると新開くんはあげる、と言って携帯からクロウサを外しわたしに差し出した。
「え。そんな、いいよ。悪いよ」
「何で。苗字持ってないんでしょ」
「持ってない、けど」
こんなの、絶対悪いし。新開くんと、新開くんの手の中にあるクロウサを交互に見つめる。いいから、と無理矢理手に握らせられてしまった。
「今日の教科書代。返品不要」
「で、でも……」
「苗字がクロウサ当てたらそれちょうだい」
「………」
手の中にあるクロウサをじっと見つめる。本当にもらってしまっていいのだろうか。でもでも、折角の新開くんの好意を踏み躙るわけには。結局わたしは分かった、と渋々それに承諾した。


この後、友人にわたしが集めているうさぎのチャームを異性と交換すると恋愛が成就されるという都市伝説があると聞かされるのをわたしはまだ知らない。



140608.
今更ながら初期新開にトゥルンクしまくってます。それはそうと明日はアニペダですね。