dream | ナノ



※新→田要素あり



これは寿一にも靖友にも尽八にも真波にも泉田にも葦木場にも黒田にも誰にも言ってないんだよ。新開は自分がホモだと曝露したときにそう言った。じゃあ何でそんな誰にも言ってないこと私に話すんだよ。そもそもあたしのあんたに対する恋心はどうしてくれんだよ。当時は純粋にそう思った。けど不思議と拒絶反応はなく、あたしはそれを普通のこととして受け入れた。驚かないのか、気持ち悪がらないのか?新開に言われてもピンと来なかった。だってあたし、バイだよ?そう答えれば笑ってくれた。口をついた冗談のつもりだったけど、新開はそれを信じたようだった。



「俺さ、苗字。好きなやつができたんだ」
いきなり寮の共同スペースに呼び出して、何事かと思えば新開はそんなことを言い出した。相変わらず新開は自分がホモであることを福富たちに打ち明けていないよう(まあだからこそあたしに言うんだろうけど)だった。
「…おめでとう?」
「ありがとな」
小さく含み笑いをした新開。こういう場合は、相手が誰かを聞いてもいいのだろうか?新開はチャリ部で、あたしは部内事情は全くもって知らないけど、福富か荒北辺りが怪しいと思っている。あと、話で聞くかぎりではイズミダとやらも一応候補にいる。
「…聞かないんだな」
「え?」
「相手が誰か」
「………別に。興味ないし」
そう答えてしまったのは新開がホモだと知っても尚、まだ彼のことが好きだからなのだろうか。本当は興味深々のくせに、なんて白々しいのだろう。
「てか、逆にそーゆうの聞いてもよかったの?」
「苗字になら何聞かれても答えるぜ」
出ました新開お得意のバキュンポーズ。必ず仕留めるってときの合図だ。
何を仕留めるんだか分かったもんじゃない。仕留めるのはウサギだけにしておけ、という冗談は冗談に聞こえなくなってしまうのでぐっと腹にしまう。
「とか言って、本当は言いたいだけなんでしょ」
「バレた?」
「じゃなきゃわざわざあたし呼んだ意味なくない?」
まさか新開がその報告だけで済ませるわけじゃなしに。新開隼人という男はそういうやつだ。誰なのよ、と聞くとニヤリと笑う。ほら、やっぱりそうなんだ。
新開は携帯を取り出し写真のフォルダ内を探す。
「この人だよ。迅くんっていうんだ」
「………」
なんというか、すごく……。ゴツいです……。え、何。新開ってこういうのがタイプなんだ?そりゃあたしに敵うはずないよ。写真に映されたジンくんとやらは新開と一緒にピースサインをしている。その新開の笑顔はあたしが今まで見たどんな彼の笑顔より爽やかで綺麗で、少しだけムカついた。


それから寮の自室に戻るとわけのわからない涙がポロポロと頬を伝った。全部全部、流れるのを待ってから鏡を取り出した。次に新開に会ったときのための、笑顔の練習が必要だったから。


140604.
アニペダで新開が思った以上に圧倒的ホモ力を発揮していたので思わずやってしまった