夕日とわたあめ


「銀ちゃん」


「おー」




銀ちゃんと久々に遠くまでデートをした帰りの電車、いつもどちらかの家でゴロゴロしてるだけなせいか2人ともヘトヘトになっている。よほど疲れたのか目がとろんとしてきた銀ちゃんに笑みがこぼれる。




「あれだけはしゃいでればそりゃあ疲れるよね」


「んー…」




既にこくりこくりと頭が下に下がってきている銀ちゃんを見て、上手く人が少ない電車に乗り込めた為、2人でゆっくり座るスペースがあって本当によかったと改めて思った。




「ちょっと寝ててもいいよ?ついたら起こすから」


「あー、じゃあちょっとだけ」




私の肩に頭を預けて目を閉じるとすぐに寝息が聞こえてきた。話す相手もいなくなり、ガタンゴトンという電車の音と、お揃いのつり革が揺れているだけになってしまいついつい私もうとうとしてしまう。

眠ってしまわないようにと視線を動かすと、斜め前に座るサラリーマンの読んでいる新聞の一面がふと目に止まった。『○○○氏、汚職か!?』昔銀ちゃんが「また汚職、Ohショック」なんてダジャレを言っていたのを思い出してふふ、と笑い声が出てしまい慌てて手で口を覆う。




「(あ、夕日)」




すごく綺麗に夕日が出ていて一瞬銀ちゃんを起こそうか迷ったが思い直し、電車の窓から写真を撮っておいた。撮れた写真を見ると銀ちゃんの頭が少し見切れていて、夕日に浮かぶ真っ白なわたあめみたいでなんだか微笑ましい気分になったので待ち受け画面にセットしてからそっと頭を撫でてみる。




「…んが」


「猫みたいだなぁ」




くすぐったそうに身じろぎする姿が可愛くてほっぺを突いてみたり鼻をつまんでみたりと思わず銀ちゃんで遊んでしまった。それにしてもよく起きないなあ。夕日に照らされてチョコレート色の街並みを走る電車内、こんな癒しがあるならたまには疲れてでも遠出する価値はありそうだ。

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