謎のお隣さん総悟くんと出会った翌日月曜日、荷ほどきで疲れきった私はもちろんあの後課題のことなんて忘れて眠ってしまい学校でこっぴどく怒られた。一週間の幕開けが不穏すぎて少し心配である。

ただ、昨日の出来事があまりに私の人生史上最高の非日常だった為いつも通りの学校に行くことで少し安堵した。総悟くんは私の学校(ちなみに女子校)とは真逆にある銀魂高校らしいので学校で見かけることはあり得ないからだ。決してフラグではない。兎にも角にも今日も無事日常を乗り切りさて放課後。


「至極無難な晩ご飯になってしまった」


ぶっちゃけ一人暮らしの若者の食卓なんてしけたもんで、パスタコンビニパスタ吉野家のローテーションでしかない。調理器具も必要最低限しか持ち合わせていないので初歩的なカレーライスあたりがいいと判断し、作ってみたわけだが(あとたぶんカレーを嫌いな人なんていないという独断と偏見もある)。


ドンドンドンッ


「うわびっくりした!」


いきなり玄関のドアがものすごい勢いでノックされ飛び上がってしまった。


「よォ。出るのがおせーや」

「いやインターホンあるんだから使ってよ」

「俺の部屋と違ってそんな高貴なもん付いてねーかと思いやした」

「付いてるし部屋の構造も全く同じだけど…」

「で、飯は?」


昨日から話してて思ったのだけど総悟くんはもう少し人の話を聞いて欲しいしできれば会話のキャッチボールもして欲しい。


「あるけど、カレーでよかった?」

「まぁそんな気分じゃねーけど仕方ねぇ」

「もう作らないからね」

「また作ってくれる予定だったんですかィ?いやぁモテる男は辛ぇや」


このまま言い合っても埒があかないと思い用意していたタッパーを渡すと何故か総悟くんが目を丸くしてはぁ?と不機嫌そうな声をあげた。


「え、なんで怒るの?」

「タッパー」

「タッパーだけど」

「寒ィから上がらせろィ」

「うちで食べるの!?」

「毎日一人飯で可哀想なお前の為に一緒に食ってやるっつってんでィ」

「まだ男の子を家にあげたことないのでお引き取りください」

「おーおー、一番乗りって言葉は嫌いじゃないですぜ」


ほらどけ、とずかずかうちに上がってきた総悟くんに今度はこっちが目を丸くする番だ。あ、こら部屋を物色するな。


「あー腹減った」

「…食べたら帰ってね」

「当たり前でィ。こんな空気悪いとこそんな長居できるかってんだ」

「総悟くんのお部屋は住みたてだから綺麗なんだよ」


文句を言いつつも私が作ったカレーライスを大盛り三杯も食べて満足そうに平らげた総悟くん(ゲップは汚いのでやめて欲しい)に気になっていたことを聞いてみる。


「今日も荷ほどきあるの?」

「あ?あんなもんあんたが帰ってすぐ全部終わらせやしたよ」

「え、なら最初から一人でも出来たじゃん」

「暇つぶしにからかったら面白そうだと思ったんでさァ」

「まぁ荷ほどき終わったなら改めてお隣さんとしてよろしくね。何か困ったことがあったら、というかあった時だけ訪ねてきてください」

「明日も晩飯よろしくお願いしやすぜ」


どうやらまだ私はこの悪魔から解放してもらえないらしい。


/
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -