「あんた、バカだろ」
泣きじゃくりながら土下座する私を他人の目を引くからと担いでとにかく中に入れた後に呆れながら土方コノヤローさんが発した言葉である。
「ご丁寧に鼻水まで拭いてもらっちゃってすいません、鼻炎なもんで」
「いや完全にビビって泣いてたせいだろ」
「ヒーッ、アホだ!この女アホだ!」
自分の言った余計な言葉のせいで私はあそこまでビビっていたというのにサディスティック星の王子さんはずっと腹を抱えて笑っている。結論としてこの2人は裏社会の人でも武士でもなく、ただの高校生ということがわかったのだけど許し難いので是非切腹していただきたい。
「あの、もう帰っていいですか。すっぴんだし泣かされるし土下座で膝は痛いし散々です」
「帰すわけねぇだろィ」
「あ、はい、じゃあまた後日菓子折り付きでご挨拶よろしくお願いしま……なんて言いました?」
「帰すわけ、ねぇだろィ」
「帰ります」
「帰す、わけ、ねぇ、だろ」
「…土方コノヤローさん」
「土方だ」
「土方さん、この方が何を言っているか理解できないので翻訳していただいても宜しいでしょうか」
お話しした感じどちらかと言うと常識人っぽい(見た目以外は)土方さんに助けを求めてみるがため息を吐くばかりで俺を巻き込むなと言わんばかりの顔をされた。元はと言えばあんたの顔が恐いというのも勘違いの要因の一つであることを忘れるなと言ってやりたい。
「総悟、お前何考えてんだ…」
「土方さんは部活があるからそろそろ帰るんですよねィ」
「まぁな」
「俺ァ荷ほどきもあるんで今日は休むって言ってあるんでさァ」
「副部長の俺が今初めて聞いたのはどういうことなのか説明してくれ」
「今言いやした」
何故か私を置いてけぼりにして話を進めるお二方。なんとなく土方さんが助けてくれよう、としてるのか?という状況だけは分かった。それから二人が同じ部活で土方さんが副部長をしているということもついでに。
サディスティック星の王子(まだ名前は知らない)さんの態度に段々とイライラしてきたのか土方さんの貧乏揺すりと青筋がひどくなってきたのだが大丈夫なのだろうか。
「…よし分かったもう勝手にしろ俺は部活へ行く」
「いやちょっと」
「こいつ今日引っ越してきたばっかなんだがあんたお隣さんならちょっと俺の代わりに手伝ってやってくんねぇか」
「嫌です」
「じゃあ頼んだ」
「あなたも話が分からないタイプでしたか」
とうとう諦めたらしい土方さん、いやもうこんなやつ土方コノヤローでいい、土方コノヤローさんは荷物をまとめ、私が文句を言う中颯爽と部屋から出て行った。私も便乗して帰ろうと思ったが首根っこを掴まれ部屋に戻され、有無を言わせない圧力の前にひれ伏したのだった。
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