隣の部屋と間違えて入ってきたらしいお兄さんは自分を「サディスティック星の王子」と名乗った。
「えっと、罰ゲームですか?」
「俗に言う通り名ってやつでさァ」
「と、通り名…?」
そんなカッコつけた顔で通り名なんて言われてもぶっちゃけ怪しい組織しか思い浮かばない。まさかサディスティック星の王子さんは極道の方だったりするのだろうか。あ、でも確かにサングラスとか似合いそう。
「裏社会の方でしたかすいません」
「あんたバカですかィ。あだ名みたいなもんでィ」
「ああ、そっち」
「そう、こっち」
ふむふむと頷きながらサディスティック星の王子さんをしげしげと見てみる。
「ところでサディスティック星の王子さん、そのヒジカタコノヤローさんのいる部屋に帰らなくていいんですか?」
「あ、忘れてた。早く行かねーと切腹させられらァ」
切腹って、やっぱりこの人極道の方かもしれない、もしくは武士(ヒジカタコノヤローさんはきっとボスだ)。切腹とやらを想像して身震いしたところでサディスティック星の王子さんが立ち上がり、随分と上の方から謝りながら出て行った。変わってるけどそんなに悪い人ではないのかも。
「…あ。サディスティック星の王子さんジュース忘れてった」
入ってきてすぐ大量のジュースを冷蔵庫に入れていたのを思い出して、しばし思考停止。
「山田さんじゃないお隣さんってことは、左隣か…」
そう呟くと、もそもそと着替えながらジュースを抱えた。
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