先生にバイクで送ってもらった帰り、ついでにスーパーも寄ってもらって至れり尽くせりでなんだか申し訳なくなったので、いちご牛乳を買って渡すととても喜んで帰って行った。まあ仲良くやれよ、と最後の一言に幾分か心が軽くなったので夕飯を作って総悟くんを待っているのだが、中々いつものドアノックはなく「さすがに今日は来ないか」と諦めかけた日付が変わるギリギリの時間にインターホンが鳴り響く。


「あ、総悟くん」

「…よォ」

「夕飯出来てるよ」

「お前、」

「とにかく寒いし、ね。カレー作ったんだよ!」


何かを言いたそうに口篭る総悟くんの腕を掴んで引っ張ると案外すんなりと部屋に入ってくれて、二人で向かい合って座った。少し気まずくて目を合わせられずにいたけど意を決して顔を上げると同じタイミングで総悟くんもこちらを向いたので一瞬で視線がかち合う。


「総悟くん、ごめんね」

「…なんでお前が謝んだ」

「いきなり部活中に押しかけちゃって、もうちょっと考えればよかったなって思ったから」

「土方から聞いた」

「土方さん?」

「お前、わざわざ箸届けに来たんだろ」

「あ、うん、そういえばそうだったね」

「あの後…お前が出てったあと部室に行ったら人の鞄の中漁ってる気持ち悪ィ野郎がいたんで聞いた」

「あの、それ私がお願いしたからで土方さんは全然悪くなくて、」

「また野郎の話かい。お熱いこって」


鼻で笑い吐き捨てるように言った言葉はやけに棘がある言い方だった。

後々土方さんが部室にいる間にあった出来事を聞いたらしく、問い詰められているところを先生に止められたと一連の流れを早口に捲したてると悪かったなとこちらを見ることもなく謝られ、これ以上話しても無駄だと思ったのか夕飯にも手を付けずに部屋へ帰ろうとしだした。


「待って総悟くん」


思わず掴んだ総悟くんの肩が驚いたようにびくりと揺れた。今はとにかくこのまま総悟くんを帰してはいけない気がして、先生に言われた言葉の通りもっとちゃんと真っ直ぐ目を見て話しを聞きたいと思ったのだ。


「なんか、このままじゃ嫌だよ私」

「俺ァ何も構いやせんぜ」

「じゃあ目見て言ってよ、邪魔だって」

「…根に持ってんなら気が済むまで謝ってやるから、離せよ」

「やだ、帰っちゃうでしょ」

「帰ってなんか困んのかィ。土方でも銀八でも呼んで慰めてもらえばいいだろ、また理不尽に好き勝手言われたって」

「私、総悟くんにちゃんと謝りたいしちゃんと許して欲しい。なんでそんなに怒ってるのかも聞きたいし、それに」


今まで通り夕飯を作って待っていたい、たまには一緒に外食をして、試合の応援だって行ってみたい、並んで登校も、バイクで送ってもらうのも全部総悟くんとまた一緒にやりたい。仲違いをしたまま今更なんでもないただのお隣さんとして過ごすなんて、すごく寂しい。


「…バッカじゃねーの、お前」


思ったことを今度は私が一気に、だけどゆっくり総悟くんの目を見て伝えると何を言い出してるんだこいつはという目で見返される。聞き終わった後の総悟くんは困惑したように眉尻を下げていたけど、そのうちさっきとは打って変わっていつものニヤリとした意地悪そうな顔をしている。


「それ、告白ですかィ」


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