落ち着きを取り戻し、なにをあんなに取り乱していたんだと自分に呆れているとケータイが鳴った。


「なんだろ」


総悟くんからのメールだ。開いてみると「弁当箱、夜返す」とのこと。さっきのこともあり昨日なんかよりもずっと気まずい気がするが、逃げ帰った申し訳なさもあるのでちゃんと夕飯は作って待っていよう。そうと決まれば材料でも買いに行こうと立ち上がり、ふとテーブルを見ると見慣れた箸箱があった。あった、というかそこにあってはいけないのだけど。


「箸、入れ忘れた…?」


瞬間、昨日の総悟くんの一言が脳裏によぎる。「なにか不備があった時点で死刑」そう、箸を入れ忘れたということは不備があったということ。


「殺される!!」


青ざめた顔で一人叫ぶが総悟くんは既に家を出てしまっている時間だ。どうしたものかと考えるが死刑の打開策としては箸を届けるという選択肢しかない。つまり銀魂高校へ私が出向くしかないのだ。勝手に行ってしまっては迷惑なのではと普段の私なら考えたかもしれないが今はそんなことを言っている場合ではなく、死刑は免れたい。

思い立ったがすぐ行動。というわけにもいかず朝食を食べて着替えてメイクをして、少し時間は経ってしまったがまだ間に合うだろうと家を出た。


「やけに緊張するなぁ」

「なにが?」

「共学の高校ってなんか怖いなって」

「しかも他校な、分かる分かる」


銀魂高校前、なかなか一歩が踏み出せず中に入れないまま独り言が出てしまったのだが何故か会話が成立している。おかしいな、と振り返ると見覚えのある白髪が。


「おはよーなまえちゃん」

「お、おはようございます銀さん先生」

「だから銀さん先生って敬称に敬称だから!おかしいからね」

「というかおはようには少し遅いですよ、11時半」

「12時回ってなかったらおはようなんですぅ」


ぶーぶーと口を尖らせ屁理屈を言う先生を横目に、早く行かないとお昼になってしまうと考え込んでいると「で、他校生のなまえちゃんが何しに?」といかにも先生ですという顔で尋ねられた。


「本当にここの先生だったんですね」

「いや、なんだと思ってたんだよ」

「総悟くんにお弁当、のお箸を届けに来たんですけどなかなか入る勇気が出なくて」

「母ちゃんかよ!小学生じゃあるめーし箸くらい自分で調達できんだろ」

「不備があった時点で死刑なので…」

「本当どんな関係性なのお前ら」

「ただのお隣さんです」

「あ、そ…」


ま、とりあえず入れば?と校門を開けてもらい、先生の許可も得たことなので堂々と銀魂高校へ入れた。ところで剣道部ってどこに、と尋ねるとなんとも適当にあっちだと指差し教えてもらったのでとにかく総悟くんを探そうと歩き出す。


「あ、先生ありがとうございました」

「おせーよ!」

「私急いでるので!では!」

「沖田に明日いちご牛乳買ってこいって言っとけ」

「ご自分でどうぞ!」


これ以上面倒ごとに巻き込まれるわけにはとその先は聞こえないふりをして走って逃げたわけだけど、ああ今私迷子かもしれない。


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