あんな話をされた手前、二人で会うのが少し気まずかったけれどとにかく友人の話は一旦忘れようとひたすらハンバーグをこねて総悟くんの帰りを待った。
「…今日誰か来んのか」
「集中してたら作りすぎちゃった…」
「作りすぎるにしても限度があんだろィ」
大量にお皿に乗せられたハンバーグを見て絶句する総悟くんに謝りながら余っても大丈夫だからと言うと何か思いついたような顔をされた。
「明日お前予定ないだろ」
「ないだろって勝手に決めちゃうの?」
「じゃああんのか」
「う…ないけど…」
「だろうな」
「バカにしてる?」
全くもって総悟くんが何を言いたいのか分からないのだけど、これはただ単にバカにされているんだろうか。
「明日他校と練習試合があるんでィ」
「そうなんだ、頑張ってね」
「暇ってこたァ朝弁当くらい作れるよな」
「べ、弁当…?」
これ、余るんだろとハンバーグの山を指差され総悟くんの言いたいことをやっとのことで理解した。余ってしまってもさすがに一人では食べきれないし、練習試合でお弁当も必要なら確かにちょうどいいかもしれない。
「何時に渡しに行けばいい?」
「7時」
「う、これまた早いっすね…」
「さすがに明日遅刻したら近藤さんに迷惑かかるんで、遅れたら死刑な」
「死刑!?」
総悟くんでも人様に迷惑がかかるのは嫌なんだ(近藤さんという方限定っぽいが)と思いながら聞いていると物騒な言葉が出てきて驚いた。お弁当を渡すのが遅れただけで死刑とは恐ろしすぎるではないか。
「絶対遅刻しないよう頑張りますはい」
「あと不味くても死刑」
「不味くても!?」
「なにか不備があった時点で死刑」
「増えた!ずるいよ死刑の条件増やすのは!」
「決定権は俺にあるんでィ」
分かってはいたけど今日も例外なく横暴な総悟くんに溜息を吐き、食べ終わったらしいお皿を下げていると眠くなったらしく欠伸をしながら「じゃ、明日はよろしくお願いしまさァ」と言い帰って行った。
「なんか私も疲れたし、今日はもう寝ようかな…」
友人たちの怒涛の言葉責めに疲労がピークなので私も早めに寝ることにして片付けを終わらせた。それにしたって私が総悟くんのことを好きなんて余計なことを言われたせいで今日は変な気をつかってしまった気がする。
静かになった部屋で一人、布団に入り改めて考えてみる。が、好きな人なんて今まで一度もいた事がなかったので結局、好きって何なんだ愛って何なんだという訳のわからないところまで思い詰めてしまい、もうこれ以上考えるのは止そうと思った。
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